日曜日, 11月 30, 2025

【HIPHPCs独占インタビュー後編】西海岸のサムライDJ Couz:2Pac、Nipseyらレジェンドから得た英知や自身の哲学を語る!

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ブラック企業みたいな2Pacの話とSuge Knightからのアドバイス

Couz:あと…2Pacの…。

Sei:え、2Pac??(2Pacファンなので前のめりになる)

Couz:96年に亡くなっているので、自分はもちろん2Pacに会ったことはないんですが、彼のスタジオでミックスエンジニアをしていた人と、以前一緒に仕事をしたことがありました。その人は2Pacの最後の時期にずっと関わっていて、『Makaveli』のほぼ全曲にクレジットされていたり、Eminem の『Stan』にも関わっていたりする、音楽業界の裏方としてかなり凄い人でした。その人に2Pacについて聞いた時、一言目に返ってきた言葉が「2Pacとの仕事は地獄だった」だったんです。2Pacは、ほぼ “24時間ぶっ通し” でレコーディングを続けるらしく…。

Sei:は⁈24時間⁇本当ですか?

Couz:そうなんです。24時間レコーディングした後、2〜3時間だけ家にシャワーを浴びに帰って、すぐスタジオに戻って来て、そこからまた24時間レコーディングが続く。それが何日も何日も続くらしいんです。

Sei:マジですか?寝てないんじゃないですか!

Couz:寝てない(笑)。しかも、エンジニアってアーティストがレコーディングを終えた後にもやることが色々あるので、その人は本当にまったく寝られなかったらしいんですよ。それが延々と続いて、「もうマジで地獄で、二度と一緒に仕事をしたくない」と思ったっていう(笑)。

Sei:確かに『All Eyez On Me』を2日か何かで録ったって噂がありましたけど、それを裏付けるお話ですね。

Couz:そうやって曲を作っていたから、2Pacの死後「本当は生きてるんじゃないか?」って言われるほど、未発表曲が残されていたと。

Sei:いっぱい出ましたよね。

Couz:『Makaveli』名義の未発表アルバムだけでも十数枚はあったらしいです。実際にリリースされたのが『Makaveli 1』で、彼の死後にアルバムを十数枚出せるほど、曲のストックが残っていたと。

Sei:やば!

Couz:で、それだけ膨大に録音していた中からの選りすぐりが、『All Eyez On Me』の2枚で、その次が『Makaveli』なんです。そりゃ良いに決まってるじゃないですか。最高傑作なんですよ。だって、2Pacにとっては『Changes』も『Do For Love』も“ボツ曲” ですからね。

Sei:ええ、ボツ曲!『Changes』なんて私の心の中の永遠の名曲なんですけど!

Couz:自分にとってもそうですし、きっとみんなにとってもそうだと思います。でも、あの曲はアルバムの収録曲に選ばれてないですからね。それくらい2Pacにとって “その上” の曲が、他にいくらでもあったという事なんでしょうね。そんな話をエンジニアから聞いたのが 2005〜2006年頃なんですが、実はその少し前に、Suge Knight(Dr. Dre、Snoop Dogg、2Pac などが所属していた Death Row Records の社長)に会う機会があったんです。

Sei:Suge Knight!あの、Suge Knight⁈

Couz:2002年の2月に、Big Boyに当時ビバリーヒルズのウィルシャー・ブルバードとサン・ヴィセンテ・ブルバードの角にあったDeath Row 本社に連れて行ってもらったことがありました。そこでいろんな Death Rowのヒストリーを聞かせてもらったり、オフィスを案内してもらったりしたんです。例えば、「このトレーニングルームで 2Pacはワークアウトして、All Eyez On Meのあのマッチョな体になったんだ」とか、エレベーターホールに飾ってある絵画を指して、「この絵はPuff DaddyとBiggieをディスった絵でな」みたいな話もしてくれて。

Sei:Sugeって声高いし喋り方は柔らかいけれど、めっちゃ圧がある人ってイメージなんですがどうなんですか?

Couz:めっちゃ怖い人でしたね。ウィットには富んでるけど、中身は正真正銘のギャングスタ。Death Rowのアーティスト全員を、いわゆる恐怖政治で抑え込んでいたらしいです。それに Dr. DreをEazy-EのRuthless Recordsから引き抜く時も、Eazy-Eをレコーディングスタジオに呼び出して、数人でボコボコにして、Dreの移籍を認める契約書に署名させた、なんて話も残ってますし。すごく小柄だったEazyを、元アメフト選手のSugeと、さらに巨体のボディーガードで襲ったっていう。そんなことしなくても、Sugeが一人で話せば済みそうなのに……と思うくらい、いろいろとヤバい人だったみたいです。で、Death Rowヒストリーを色々話してくれている最中に、Sugeが「お前、音楽で成功したいのか?」って聞いてきて。

Sei:やばやば~(大爆笑)

Couz:「いいか、Couz。成功したいんだったら……寝るな。寝ないで、人より多く仕事をしろ。それがお前を成功に導く」って言ったんです。その数年後、さっきの2Pacの話をエンジニアから聞いた時に、このSugeの言葉を思い出しました。最初からSugeがそう思っていたのか、それとも2Pacの仕事ぶりを見てそう思うようになったのかは分かりませんが、少なくとも 2Pacはまさにそれを実行していたんだなと。よく考えると、Snoopもそうなんですよね。最初の『Doggy Style』から約30年で20作以上。ディスコグラフィーを見てもらえば分かりますが、平均すると2年に1枚以上はアルバムを出していて、その間にフューチャリングも大量にこなし、ミックステープも作りまくっている。ものすごいハードワーカーなんです。Dr. Dreはリリースこそ少ないですが、発表していないだけで、実は曲が大量にある。あの人も間違いなくハードワーカーです。Ice Cubeもアルバム数はそこまで多くないけれど、ライブを沢山こなしているのはもちろん、その間に映画を作ったり、バスケのBIG3を立ち上げたりと、やはりハードワークをしている。レジェンドと呼ばれる人たちは本当にハードに仕事をしているんです。寝ずに仕事をすることが、必ずしも良い事だとは思わないけれど、でも他の人と同じ様に生活をしていたら、同じ様な事しかしていなければ、絶対に成功はない。それが2Pacの話からもSuge Knightの話からも学んだことですね。

10年ほど前、LAのグラミー美術館で2Pacの展示があったんですが、そこに『2 Of Amerikaz Most Wanted』のミュージックビデオのアイデアスケッチのようなメモが展示されていました。「まずリムジンから2人が降りてくる、次に……」という感じで、アイデアが出た瞬間にパパッと書き留めたような2Pac直筆のメモでした。それを見た時、「2Pacはアイデアを絞り出すのではなくて、溢れ出てくるんだ」と強く感じました。リリックもMVの構想も、とにかく次々と湧いてきて、それを形にするためにあれだけのハードワークを続けていたんだと思います。

ちなみに、そのエンジニア曰く「2Pacにとってビートはなんでもいい。あの溢れ出るリリックやストーリーが、たとえシンプルなビートだったとしても、その曲を唯一無二の作品にしてしまう」んだそうです

DJ Couzが最も尊敬するアーティストとは?

Sei:では次の質問ですが、最も尊敬するアーティストは?

Couz:人物でいえば Big Boy。アーティストに限定するなら、一般的に“好きなアーティスト”として挙げるのは Dr. Dre、Snoop Dogg、Ice Cube。アーティスティックなかっこよさでいえば DJ Quik。生き様としてのかっこよさで言えば Nipsey Hussle。

DJ Quikの小話

Sei:うわあ、そのまとめ方がカッコイイ!ありがとうございます。分かりやすく、刺さります。DJ Quikさんの名前が出ましたが、彼も怖い方らしいんですけど、どうなんですか?

Couz:両面ある人ですよね。

Sei:彼は赤ですよね?めっちゃ青を嫌っているっていう印象ですが。

Couz:DJ Quik 個人が青を嫌っている、というわけではないと思いますよ。ただ、Quikはブラッズなので、ギャングの関係性だけで見れば、基本的には敵対関係になるとは思います。とはいえ、Quikはクリップスのアーティストとも普通にコラボしていますし、二十歳くらいからずっと音楽業界にいる人なので、ギャングバンギンを前面に出しているタイプというより、完全に“音楽に振り切っている”人だと思います。ただQuikの性格的に、色々な面で言える事ですが、何かに集中すると一気にそっちに向かっていくタイプみたいで、日本に来た時にも、急に何かに熱中し始めるところを何度も見ました。なので、もし何かあった時は……。

Sei:いや、怖そうですよね!

Couz:暴れるとかではないんですけど、止まらなくなることはあるかもしれないですね。実際、理不尽な取り締まりをしようとした警察とケンカになっている動画があったりしますし。それとQuikの近くにはいつも、彼のリリックにも何度も登場するBlack ToneというQuikのギャングの大ボスがいたりもします。ちなみにYGのギャングの大ボスでもあります。そしてその人は、なぜか自分のことをすごく気に入ってくれていて(笑)。

Sei:もう、皆から愛されまくりじゃないですか、Couzさん(笑)

Couz:Black Toneは会うと、なぜかいつも「一緒に写真撮ろうぜ!」ってセルフィーしてくるんですよ。「おい、入ってるか? 入ってるか?」って確認しながら(笑)。で、それが終わると、また元のあの怖〜い感じに戻る。DJ Quikのアーティスティックなかっこよさについては、自分のブログにも書いているので、時間がある時に読んでみてください。(笑)

DJ Couzがカルチャー内やアーティスト達からリスペクトされる理由

Sei:その大ボス、お茶目ですね(笑)日本人のみならず、外国人がブラックカルチャーに入り込むってかなり珍しいというか、ハードル高いことだと思うんですけど、どう成し遂げたんですか?

Couz:自分の場合は、まず何よりもBig Boyの存在が大きいと思います。その上で、アメリカ、特にWest Coastヒップホップの魅力やアーティストのかっこよさを日本に伝える事を、自分のライフワークとしてDJを続けてきました。過去に一緒にツアーやプロジェクトをした DJ Quik、Nipsey Hussle、Xzibit、Coolio、Baby Bashなども、「こいつは俺たちのファンを増やしてくれている」と感じてくれていると思いますし、自分が彼らを深くリスペクトしていることも伝わっていると思います。さらに、自分は多くのアーティストとBig Boyを通じて出会ってきました。特にWest CoastのアーティストにとってBig Boyは家族のような存在なので、その彼の“ホームボーイ”として紹介されるのは、かなり特別な入り方だと思います。その上で、実際に会った時に自分がやってきた事や、今も続けている活動を見てもらえることで、彼らも自然と受け入れやすいのではないかと思います。

Sei:なかなか難しいことですよ。更にリスペクトを得るってことも、難しい。

Couz:自分が一番大事にしているのは、誠実であることです。アメリカのアーティストに対してはもちろん、自分のリスナーや作品にも、常に真面目に向き合うよう心がけています。名前を勝手に使わない、嘘やはったりで物事を進めない、筋を通す――大事な事はいろいろありますが、結局は「人として当たり前のことを当たり前にやること」だと思っています。日本人とアメリカ人で文化の違いはありますが、こうした姿勢は必ず伝わりますし、彼らもそこをしっかり見ていると感じます。

B-Realの小話

Sei:ありがとうございます。誠実であることの大切さ、ってやはり信頼を得る基本ですよね。あの、ちょっと前に出たCypress HillのB-Realさんのお話しを伺っても良いですか?彼のラップの声って、普段の声じゃないじゃないですか?どんな方なんですか?

Couz:ブラッズって基本的にブラックが多いですよね。

Sei:そうですよね、でも彼違いますよね?

Couz:えぇ。B-Realはラティーノですが、10代の頃はブラックが多いアクティブなブラッズの、かなり近いところにいたらしいです。ただ17歳の時に撃たれて生き残り、そこから音楽の道にのめり込んでいったという話を聞きました。一般的にラティーノやメキシカンのヒップホップアーティストのファンは、同じ人種が中心になることが多いんですが、Cypress Hillはそうじゃない。ブラックを含め、他の人種のファンも非常に多い。もっと言うと他ジャンルのファンも多い。そして彼らはヒップホップ初期からずっとトップに君臨し続けている存在です。だからB-Realは色々と別格なんですよね。例えば、Snoopが黒人系ギャングとラテン系ギャングの対立と共存をテーマにした曲を作った時、ラティーノのラッパーが必要になって呼ばれたのがB-Realでした。『Vato』という曲です。また、DJ Quikの『Fandango』という曲がありますが、みんなC-Walkは知っていると思います。そのブラッズ版がB-Walkなんですが、『Fandango』はその B-Walk にも触れている曲です。その曲でブラッズ代表の Quik が客演に呼んだのも B-Real だったんですよ。B-Real本人はギャング・リレイティッド(ギャングとの関係)を否定していますが、アーティスト・ファン問わず、周りの色んな人たちから深いリスペクトを受けているのが伝わってきますよね。

LAのギャング事情:フッドのルールとは?

Sei:えー、B-Real繋がりなんですけど、ずーっと話してくださっていてずーっとこの質問に関係するんですけど、LAというかWest Coastのアーティストを語る上でギャングはもう外せない話なんですが、これに関して一般的な知識を教えていただけますか?

Couz:LAに来る上で、これは本当に大事なことだと思います。自分がどうこうという話ではなく、一般的な話として聞いてほしい、ベストマッチな話があります。まずLAにはギャングが400近くあるんですよね。しかも、その敵対関係や友好関係は毎日のようにアップデートされていく。それを把握して生きていくなんて、LAの外から来た人間にはまず不可能なんです。日本人の中には「LA のギャングは赤と青の二つだけ」なんて思っている人も多いみたいですが、実際は赤の中にも青の中にも、そしてそれ以外にも何百というギャングがあって、それぞれに敵対・友好関係がある。だから、それをLAネイティブでもない人が把握するのは絶対に無理なんです。実際、日本人でギャングに所属している人もいますし、所属していなくても深く入り込んでいる人もいます。何十年も前には日系人のギャングがサウスセントラルにあって、かなりイケイケだったなんて話もありますが、それは本当に特殊な例で、みんながそうなれるわけではないんです。

自分が LAに来て間もない頃、コンプトンのギャング出身で、かなりランクの高い知り合いの OGが言っていたんですが、「いいか Couz。ギャングのタギングを見たら、写真なんか撮ってる場合じゃねぇぞ。なぜならタギングってのは、そのギャングが縄張りを主張してる証拠だ。つまり、そこは抗争の真っ只中ってことだ。昨日ここで誰かが撃たれたかもしれない場所って事なんだぞ。」

さらにこうも言われました。「そのタギングを見て、そのギャングが何色なのか、どこのチームのウェアやキャップを身に付けているのか、靴のレースは何色か。敵対ギャングは何色を、そしてどこのチームを身につけるているのか?友好ギャングの色は何色か。敵対ギャングの友好ギャングはどうか。そういった事が “全て” 分からないなら、その場から今すぐ離れろ。それがフッドのルールだ。」

そして最後にこう言われました。「そういう事が分からない留学生や旅行で来た人間が、フッドに入るなんてあり得ない。絶対に入るな」彼は XzibitやEminemのボディーガードもしていて、Xzibitと一緒に日本にも何度も来ているような人なので、身を守ることに関して特にシビアなタイプでした。でも逆を言えば、そういう人の言葉こそリアルなんですよね。そしてその OG が言ったように、少なくともLAでは赤や青の他、 “意味を強く持つ色の服” は着るべきではないと、自分も思います。

Sei:なるほどね。ストリートへの憧れだけでLAに来ちゃう人もいるかもしれないので、こういうお話はすごくリアルで有り難いです。

Couz:実際日本人の中にはフッドに来て「大丈夫だった」って言う人もいるけど、それはたまたま大丈夫だっただけと考えるべきです。曜日と時間が違えば、本当に何が起きるか分からないんです。「トラブルに巻き込まれた時は、話せば分かってもらえる」なんて言う人もいるけど、殺気だって引き金引く直前の人間を止められる効果的な一言を言えるほど英語が流暢なのか?ネイティブでも難しい事を瞬時にできるのか?って事です。「えぇ〜っと……」って言ってる間に、相手は何発でも撃てるわけですから。

Ice Cubeも感嘆!夢を叶えた愛車:63年型Impala Convertibleについて

Sei:LAフッドのリアルの話は、もう有り難い以外ないです。貴重なアドバイスです。次はローライダーの話ですかね。West Coastのヒップホップカルチャーを語る上で欠かせない文化の一部ですね。ローライダーにもお詳しいとのことですが。

Couz:1963年式インパラSSコンバーチブルに16年以上乗っています。インスタにも上げているんですけど。なんならNipseyのMVにも出てますから!

Sei:Nipseyの?マジですか?!

Couz:広島のレフティーズってお店でビルドしてもらった車で、2009年のHot Rod Custom Showという大きなカスタムカーのイベントでベスト・ローライダー賞を頂きました。それ以外にも、全部で4つくらい賞をもらっています。日本のローライダー系の雑誌でも何度か特集されましたし、ピンナップにもなりました。映画『Boyz-N-The Hood』以来の夢を、DJの仕事だけで叶えたドリームカーですし、インパラは歴史的価値も高い車なので大事に乗っています。Ice Cubeに会った時に、「Cube の映画『Boyz-N-The Hood(Ice Cube が主演で 63 インパラに乗っている)』を観てローライダーにハマって、今は日本でこの63に乗ってます」と写真を見せたら、Cubeが「Ooh, Sweet!ヒューッ」って

Sei:Ice Cubeが「スイート、ヒューッ」て言ったんですか(笑) 。今度いつか特集組むので、ローライダーについて詳しく教えて頂きたいです。お車は日本ですね?LAでは?

Couz:是非是非!LAではHarley(Davidson)のバイクに乗っています。

クラブDJ、ラジオDJ、ライブDJについて

Sei:カッコイイなあ…Harleyの話もいつか合わせてお聞かせてください。次の質問行きますね。元々はミックステープDJ、そこからクラブDJを始めたそうですが、ラジオDJやツアーでのアーティスト専属DJなどの違いを、業界若葉マークの読者のためにCouzさん視点でお話お願いいたします。

Couz:クラブDJは、基本的にフロアの反応を見ながら曲をかけていきます。かなり極端な例で言うなら、たとえば1曲目にSnoopの『What’s My Name』をかけて盛り上がったら、このお客さん達はWest Coastが好きなのかな。じゃあDre行ってみようか。Snoop、Dreで盛り上がるならYGも行けるかもしれない。YGがハマったならMustard系も行けるかもしれない……みたいに組み立てていくわけです。逆に、SnoopでイマイチだったらEast Coastに振ってみる。それも反応が良くなければ、じゃあ新しめの曲を行ってみよう……というように、お客さんの反応を見ながらやっていくのがクラブDJですよね。でもラジオDJの場合は、リスナーの反応が見えない。ある意味予想でやるしかないので、もっと難しいんです。しかもラジオって、気に入らない曲が流れたらボタンひとつで局を変えられる。クラブだったら、他のクラブに行くには外に出て歩いたりして時間がかかるから、その場から離れにくい。でもラジオは一瞬で変えられてしまう。だから、ラジオは一曲一曲が本当に勝負。クラブDJももちろん勝負なんだけど、ラジオは反応が見えない上に、簡単に他へ行かれてしまう分、もっとシビアです。リスナーを一瞬でも飽きさせないようにしないといけないし、外したら最悪クビになる可能性もある。さらに、ラジオ局ごとのヘビロテリストがあるので、それを中心にかけつつ、でも他のDJと同じ流れにならないようにしつつ……と。その他にも色々な縛りや気にする部分が多いんですよね。

Sei:うわぁ、シビアだ。

Couz:自分の中では、アメリカのラジオDJは難易度がすごく高いと思います。実際、ラジオDJをやっている人は、クラブでも普通にガンガン盛り上げられますし。

Sei:ラジオDJを含め、CouzさんぐらいのレベルでDJとして活躍している日本人って全米でもそうそういないと思うんですけど、アーティスト専属のライブDJはどうなんですか?

Couz:自分は2004年くらいからDamizzaのライブDJをずっとやっていて、その他にもBone ThugsのLayzie Bone、South Central Cartelなどを単発でやってきたんですが、ライブDJはあくまでライブをするアーティストが主役です。だから一番大事なのは、アーティストが最高のライブをできるように、全てを準備することだと思います。トラックをかけるのはもちろん、エフェクト音、たとえば爆発音を用意したり、音をカットしてほしいところで正確にカットしたり、アーティストが気持ちよく歌い出せるタイミングで曲を入れたり。そういった作業を、ミスなく確実にこなすことがまず最優先ですね。場合によっては、ライブ前にDJをする時間があるんですが、それは自分が目立つためではなく、ライブを盛り上げるための時間です。例えば、お客さんを見て「この人たちはWest Coastが好きなんだな」と感じても、じゃあ『California Love』をかけてガンガン盛り上げればいいのかというと、必ずしもそうではない。もし静かな曲でライブが始まるアーティストだった場合、そこでDJが全開盛り上げてしまったら、ライブ本番が逆に冷めた雰囲気で始まってしまう(笑)。だから、ちょうど良いテンションを保ちながら、お客さんが楽しめて、なおかつライブが一番映える曲を選んでかける必要があるんです。

AK-69 feat. Maccho 『I Don’t Give A Fxxk』制作秘話

Sei:アーティストを立てつつ、お客さんの反応観つつ、テンション上げる曲ってことですね。うわあ、それもハードル高いですね。私自身DJじゃないので、すごく為になります。ありがとうございます。ちょっと話を戻しますが、先ほど(前編にて)話があったAKさんの『I Don’t Give A Fxxk』について、どうやってビート提供という流れになったのですか?

Couz:その頃、自分は Dr. Dre のレーベルに所属していたUSアーティストとのプロジェクトのために、Onodubと一緒に大量にビートを作っていました。その中のひとつが、出来た瞬間から、いやたぶん作っている最中から「これは絶対にAKだ!AKに歌ってもらいたい!」と強く思ったビートがあったんです。

完成してすぐ、AKが出演する東京のライブ会場へ行き、AKはトリで会場をガッツリ盛り上げた直後のバックステージだったので、マネージャーさんが「今クールダウンしてますので、準備できたらすぐお呼びしますね」と案内してくれて。少しして控室に通されて、「AKにピッタリなビートがあるんだけど聴いてくれない?」と言って再生したんです。最初は笑顔だったAKが、ビートが流れ始めてすぐ音楽モードのあの鋭い目になって。ワンバース聴き終わる頃には、「カズくん…このビートもらいますわ。キッチリ仕留めますんで…」って。AK、マジでクールでしょ⁉︎

Sei:AKさん、想定通りのクールさです!

で、そこから数ヶ月後のレコーディングスタジオ。AKのバースを聴いただけで、“他と確実に違うもの” が生まれると確信。フックで一気にぶち上がり、Macchoのバースでさらに確信が深まり、3バース目の二人の掛け合いで、完全にノックアウトされました。

その曲を初めてライブで聴いたのは、AKのアルバム『Red Magic』のリリパの名古屋ガイシホール。『I Don’t Give A Fxxk』がかかった瞬間、前から後ろまで、フロアから最上段まで、観客全員が手を上げてブンブン振っていたあの景色と感動は、今でも鮮明に覚えています。

DJ以外の仕事について

Sei:次はDJ以外のお仕事ですが、大物アーティストを日本に招致したり等の活動もされているのですよね?ご自身の会社を運営されているのですか?

Couz:以前は、DJ専門のレーベル・マネージメント会社に所属していて、その会社のプロジェクトとしてUSアーティストの招致なども行っていました。2010年からは独立して、それらも含めて個人で様々な活動を続けています。

Sei:外タレ招致ってことで…LAのOG達を日本に招致してくれませんか?

Couz:日本でやりたい人がいるのであれば、準備する事はどのアーティストであっても全然可能です。

Sei:今後は日本とアメリカ、どっちがメインな感じですか?

Couz:どっちがメインというよりも、プロジェクトによりますね。今もUSアーティスト関係の仕事で、実はひっそりと(笑)日米を行き来していますし、それ以外にも音楽を中心に、ローライダーや “ストリートカルチャー” 全般に貢献できるように、多くの人と関わりながら、色々やっていきたいと思っています。

DJ Couzからのアドバイス:誠実であれ!

Sei:ですよね。有難うございます。最後の質問です。今後Couzさんみたいに世界を股にかけて活躍するDJやアーティストを目指す若者や、弊社サイトの読者の参考になるようなアドバイスがあれば、是非是非お願いいたします。

Couz:そんな偉そうなことを言える立場じゃないんですけど……自分自身に言い聞かせているのは、まず「誠実であれ」という事です。これはすべての基本だと思っています。そして次に大事なのが「誰を見習うのか?」。もっと端的に言えば、「誰を見て、その人のどこを見るのかを間違えないこと」。これは本当に大事だと思います。例えば、Nipsey Hussleは多くの人からリスペクトされていますが、それは彼が全米で最も有名なギャングの一員から上り詰めたから、だけではありません。Nipseyの場合、彼の言葉と行動、その両方で多くの人を感動させたからこそ、あれだけのリスペクトを集めていたんです。Nipseyはかなりの読書家で、自分が初めて彼のスタジオに行った時も、本棚に本が並んでいて、その知識量のすごさに圧倒されました。実際、すごく聡明で賢い人で、その膨大な知識から生まれるビジネスアイデアやアドバイス、生き方そのものが、多くの人に影響を与えていました。年齢、人種、職業を超えて、誰に対しても的確な言葉を返していた。SNSでも Nipseyの格言が広まってますが、まさにそれがNipseyがリスペクトされる理由なんですよね。

Nipseyみたくなりたいからといって、青い服を着て悪ぶるだけでは、Nipseyの本質には絶対に近づけない。彼の本質は知性や実行力、行動力にあった。だから「どこを見るかを間違えるな」ということなんです。今は何でも見られて、情報も無限に手に入る時代だからこそ、情報の取捨選択が本当に大事。得た情報が自分を導く羅針盤になるので、その “どの情報を選ぶか” を間違えてはいけないと思います。

そして、リアルを知らない人間が語る“リアル”には、何の意味もない。本場を知り、本物と関わることはすごく大事です。ただ、その「本物レベル」の人たちは、基本的に同じレベルの人としか関わらない。普通レベルの人間は、彼らに会うことすらできないんです。だから、フックアップどうこう言う前に、まずは自分自身のレベルを上げること。そのレベルを上げるためには、常に賢くやり続けることが必要です。ただし “賢くやる” と “ずる賢くやる” は全く別物なので、そこを履き違えないように。

まとめると、誠実であることを軸に、正しい目標を見極め、信用できる人の言葉に耳を傾けながら、自分自身のレベルを上げ続けること。そして、その先の正しい道を賢く歩み続けること。それがすべてだと思います。

Sei:なんかすごく重みがありますね。基本ながらも重要でガツンと来るアドバイスです。素晴らしい言葉ありがとうございます。

Couz:いやいや。自分はBig Boyがいてくれたおかげで、色々な事に早く気づけたんです。もし彼に出会っていなかったら、全く別の人生を歩んでいたと思います。たとえばBig Boyは、出会って間もない頃に「LAでは青い服を着るな」とアドバイスしてくれていました(Couz氏は普段LAではニュートラルな白黒コーデでまとめている)。もしそれを知らなかったら、自分はコンプトンやサウスセントラルにも行くので、もしかしたら撃たれていたかもしれないわけじゃないですか。

Sei:Big Boyさんが素晴らしい方っていうのはラジオで話す言葉や行動で何となく想像はついていたんですけど、Couzさんのお話を聞いてそれがやはりレベチだなって思いました。

Couz:今のDJ Couzは、Big Boyありきなんです。

Sei:Big Boyさん、ファンのサインを断らないって聞いたので、どこかでお見かけしたら勇気出して声かけます(笑)

Couz:絶対断らないから、大丈夫!

Sei:長いインタビューでしたが、重ね重ねありがとうございました!!

Afterthoughts:LAのサムライ

と。和気藹々でインタビューを終えたのだが、実はこの日、Couzさんが抑えていてくれた会議室でインタビューを行っていた最中、ビル内で火災訓練が行われアラームが大音量で鳴りだし、話をするどころではなくなってしまったのだ。どうしようかと思案していたら、Couzさんはさっと状況を確認して誰かに連絡を取り、そつなく近場の建物の会議室を抑えてくれた。その上、LAの音楽シーンを語る上で外せないギャング関係の話も、繊細な話題ながら丁寧に言葉を選んで、且つ分かり易く説明してくれた。この、素早い状況判断と対応能力の高さ。気遣い。筆者が最適な言葉が見つからず濁しても相手の意図を汲み取りフォローする機転。そして、言葉の端々から溢れる誠実さと、決して驕らない控えめな性格。

義理堅く、不言実行で行動する彼には「サムライ」という言葉がピッタリだ。単なる戦士としての武士や野武士ではなく、それこそ誠実で高潔な「(LAの)サムライ」。筆者もCouz氏の話に人としての深く感銘を受けたが、本記事を読んだ読者も同じ気持ちだろう。

今回のインタビューも3時間という長時間になってしまったが、時間を忘れてしまう程面白い話のオンパレードであった。いつか別特集で、ローライダーや彼のプロジェクトに関する「ストリートカルチャー」の知識や感性を教授してくれるとの事なので、HiphopCsヘッズも楽しみに待っていてくれ。Couzさん、ありがとうございました!

資料提供:DJ Couzさん

DJ CouzさんInstagram:https://www.instagram.com/djcouz

DJ CouzさんWebsite:https://dj-couz.com

Key Takeaways

  • 2Pacは24時間レコーディングを続け、未発表曲が多かった。
  • Suge Knightは成功の秘訣として「寝るな」とアドバイスした。
  • DJ CouzはWest Coastヒップホップの魅力を日本に伝えることをライフワークにしている。
  • 誠実さと正しい情報選択が成功の鍵であるとCouzは語る。
  • DJ業界のキャリアにおいて、クラブDJ、ラジオDJ、ライブDJの役割はそれぞれ異なる。

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