日曜日, 11月 2, 2025

NLE Choppaが新曲「KO」でNBA YoungBoyに痛烈ディス——2PacとMJへのオマージュを重ねた“道徳”論争

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要点から

Key Takeaways

  • NLE Choppaは新曲「KO」でNBA YoungBoyを直接批判し、影響力の倫理について提起した。
  • 曲は2Pacやマイケル・ジャクソンをオマージュし、ディスの伝統とポップ文化を融合させている。
  • リリックはNLEの過去作との整合性に疑問を投げかける一方で、若者への影響を批判する。
  • 2人の間には2022年からの未清算な歴史があり、今回の「KO」で対立が再燃した。
  • 「KO」はノスタルジーを攻撃に転化し、今日的なメッセージが込められた作品である。

メンフィス出身のNLE Choppa(=NLE The Great)が新曲「KO」でNBA YoungBoyを名指しで批判した。ビートは2Pac「Hit ’Em Up」と同系統のサンプル使い、映像では『Smooth Criminal』『Thriller』を想起させる装いと演出を導入。歌詞では「若者を毒している」とYBの影響力に道徳的異議を唱えつつ、自身の過去作との“整合性”を問うブーメラン批判も招いた。ディスの伝統、ポップ・アイコンの引用、アルゴリズム時代の“ロールモデル”観を一つの作品で接続した点が本作の核である。 

何が起きたのか

10月30日(JST)、NLE Choppaが「KO」をリリースした。冒頭からNBA YoungBoy(YB)を名指しし、若年層への悪影響を指摘するラインを連打。映像は2Pacとマイケル・ジャクソン(MJ)への明確なオマージュで構成され、ヒップホップのディス伝統 × ポップ史の記号を“戦術”として組み合わせている。

ビジュアル設計——2PacとMJが同時に立ち上がる理由
• 2Pac文脈:代表的ディス曲「Hit ’Em Up」のサンプル系統を踏襲。NLEは衣装でもPac像を再演し、“正面衝突の美学”を視覚化した。 
• MJ文脈:『Smooth Criminal』風のスーツ、『Thriller』の小ネタが随所に挿入され、悪(スリラー的怪物)と正義(スムースな処刑人)という倫理の二項対立をMV全体で寓話化している。 

リリックの核心——“影響力の責任”を突く

本作の矢はライムの巧拙だけでなく、影響力(インフルエンス)の倫理に向く。NLEはYBのメッセージが若者に与える負の効果を直球で批判する一方、SNSでは「“Slut Me Out”の彼がそれを言うのは矛盾では?」という反発も噴出。正しい主張 × 語り手への不信(Right message, wrong messenger)という、現代的なディベート構図が可視化した。 

背景——NLE vs YBの“未清算”史

両者の火種は2022年のYB「Know Like I Know」周辺まで遡る。キング・ヴォンを巡る発言/文脈から緊張が高まり、その後“本気のビーフではない”と和らいだ空気もあったが、今回の「KO」で休戦ラインは再び消えた。時系列で見ると、休止→復帰→名指し再燃という“復帰の狼煙”としてのディスである。 

文化的読み解き——ディスは“道徳”を測る秤になったのか

90年代のディスはテリトリー/リスペクト/技術の問答が中心だった。2020年代後半のディスは、そこに「倫理」や「コンテンツ・責任」が重なる。アルゴリズムで巨大化した“キャラ”と“カルマ(模倣と拡散)”をめぐり、アーティスト同士が教育的役割(Role Model)を互いに要求し始めている——本作はその潮目を象徴する。MVのMJ引用は、“ショーとしての悪”と“演者の責任”を二重露光する装置として機能している。

受け止めと波紋

リアクションは二極化。支持派は“YB批判の論旨”を評価し、懐疑派はNLEの過去曲との整合性を突く。YBサイドの周辺反応も拾われ、ディスの第二ラウンド(返答/スルー/皮肉)への関心が拡大中だ。プラットフォーム横断のトラフィック(Spotify/YouTube/Instagram)とEC連動(「KO」関連グッズ)までの導線設計も目立つ。 

本作の位置づけ——“オマージュ×攻撃性”ハイブリッドの到達点

「KO」はノスタルジー(2Pac/MJ)を“攻撃の演出”に転化しつつ、メッセージの攻撃対象を“人物”から“影響力の倫理”へとスライドさせた点で今日的である。直接的な罵倒に終始せず、誰が語るかまで含めた“語りの正当性”を作品内に仕込んだところが、単なる煽り合いを超えるポイントである。

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編集注:本稿は“速報”ではなく、ディス曲の文化的位置づけを主眼に再構成している。翻訳の置換や引用に依存せず、映像記号・系譜・倫理論点の分析を加えた“二次創作性の高いレビュー/解説”。

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