日曜日, 10月 5, 2025

2026年のNFLスーパーボウルのヘッドライナーはBad Bunnyに決定!大きな反響を呼んでいる、その理由とは?

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今年2月のKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の歴史的スーパーボウルパフォーマンスで全世界が熱狂したのが、つい昨日のことのように思える今日この頃。なんとラテン界のスーパースターBad Bunny(バッド・バニー)がケンドリックに続き、2026年スーパーボウルのハーフタイムショーのヘッドライナーに選出されたとのニュースが流れ、全米…いや、世界を驚愕させた。

なぜ、皆驚いたのか。2016年に颯爽とラテン音楽シーンに登場したこのスーパースター。彼は自身のプエルトリコのルーツと母国語であるスペイン語に忠実であり、あえてスペイン語での楽曲を発表し続けてきた。そう。英語ではなくスペイン語の楽曲、というところがミソなのだ。ハーフタイムの公演時間は約15分なのだが、このセットリストで完全に非英語のパフォーマンスを披露する(かもしれない)初のアーティストとなるのだ。この英断は、アメリカ社会の今のあり方についてNFLが大きな一石を投じた、とも捉えられるのである。

もちろんこの決定権には、Jay-Z(ジェイ・Z)率いるRoc Nationが関わっている。ハーフタイムショーのプロデュースを担っている同社が、いや、最終決定権を持つジェイ・Zが今年どのアーティストを選出するか、みな指折り数えて待っていた。2020年からハーフタイムショーを担当しているRoc Nationは、その年のマイアミのスタジアムでShakira(シャキーラ)やJennifer Lopez(ジェニファー・ロペス)らラテン系のアーティストを招致した過去を持つ。その際、件のバッド・バニー氏もスペシャルゲストとして参加していた。つまり同氏は、今回でNFL2度目の出演となる。そしてなんとヘッドライナーという栄誉だ。HOV氏はこう語る。「彼がプエルトリコのために成し遂げてきたこと、そしてこれからも無し続けることは本当に感動的だ。彼を世界最大の舞台に迎えることができ、光栄だ」

スペイン語なので、彼の楽曲自体聴いたことがないというHiphopCsヘッズも、もしかしたらいるかもしれない。元々はラテントラップとレゲトンを土台として出発しているが、ヒップホップからポップ、ラテン系の伝統音楽まで様々な音をブレンドしているのが特徴だ。2018年にDrake(ドレイク)との『Mía』や、Cardi B(カーディ・B)との『I Like It』をドロップしたり、2023年にはTravis Scott(トラヴィス・スコット)やThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)と『K-pop』をリリースしたりと、米国ラッパーやシンガーともよくコラボレーションしている。

ベニート(バッド・バニーの本名Benito Antonio Martínez Ocasio/ベニート・アントニオ・マルティネス・オカシオ)は、このめでたいニュースに対し、「俺が感じていることは、俺自身の限界を超えている」とNFLが公開した声明の中で述べた。「これは俺の人々、俺の文化、そして俺たちの歴史のためだ」

この英語をあまり話さない(正式には話せるが、スペイン語の方が得意らしい)31歳のラテン系スターの起用に、疑問視している声ももちろん出ている。大人気Youtubeチャンネル『Vlad TV』のDJ Vlad(DJヴラッド)氏はXで「バッド・バニーがスーパーボウルのハーフタイムショーを務めるというのは奇妙に感じる。彼がこんなに大きなチャンスを得たのは嬉しいのだが、彼の曲には英語のものが無く、私はスペイン語を話せない。スーパーボウルの観客の殆どもスペイン語話者ではないだろう。アメリカ人のうちスペイン語を話すのはたった14%だから、テレビ視聴者の殆ど彼の曲を知らないし理解しないと思う。彼がFIFAやワールドカップのようにスペイン語圏の観客が多い大きなイベントに出演するのなら分かるが、スーパーボウルでは意味がないように思う。NFLは既存のファンを犠牲にしてラテン系の観客を増やそうとしているように見える。皆はどう思っただろうか?」

皆さんはお気づきだろうか。ラテン系オールスター祭りだった2020年も、今回の2026年も、同じ大統領が就任していることを。そして、米国内の移民政策がより一層厳しくなっている現実を。早速MAGA派や保守支持者らが、NFLのこの決断に抗議しているニュースも飛び交っている。だがどうやらNFL(もしくはブレーンのジェイ・Z)は分断化が進んでいる米国内の多様性を受け入れ、世界中の視聴者にアピールするという戦略的な決断を優先したようだ。本決定について、現時点で大統領のコメントや声明は出ていない。

バッド・バニー氏はバイデン前大統領や先の選挙で、Kamara Harris(カマーラ・ハリス)を支持していた過去もあり、今年初め、チャートトップを飾った6枚目のスタジオアルバム『Debí Tirar Más Fotos』をリリースしたが、その中の楽曲『NUEVAYoL』のMVでは、現大統領の反移民政策に真っ向から言及している。そして、11月から始まるワールドツアーでも米国をあえて外していた。彼は9月10日公開のインタビューでその理由を、移民関税執行局(ICE)の取り締まり強化が、理由の一つだと語っていた。「アメリカに来なかった理由はたくさんあったが、どれも憎しみから来たものではなかった」と彼はI-D誌に語っていた。「具体的には、プエルトリコでのレジデンシー公演のため、ここはアメリカの準州だが…アメリカから人々がショーを見に来ることができた。アメリカ国内のラテン系やプエルトリコ人も、ここや世界のどこへでも旅行できた。でも、問題はあったんだ。例えば、ICE(移民税関捜査局)が(俺のコンサート会場の)外に来るかもしれないってね。それは俺たちも話し合っていて、とても懸念していたことだった」

上記はワールドツアーでの懸念だが、ハーフタイムショーでもバッド・バニー氏が危惧している事態がリアルに起こる可能性がある。現に国土安全保障省顧問のCorey Lewandowski(コーリー・ルワンドウスキー)氏は、10月1日(水)にBenny Johnson(ベニー・ジョンソン)氏のポッドキャスト番組に出演し、NFL最大のイベントに連邦捜査官が介入する可能性が高いと参加者に警告した。同氏は「この国に不法滞在している人々に安全な避難場所を提供できる場所はどこにも無い。スーパーボウルでも、他にのどこにも無い」と述べ、ICEの関与も示唆した。

この国を挙げての一大イベントが、なんだかきな臭くなってきた。今回のちょっと一筋縄ではいかない大胆なヘッドライナー選出。発表の時点で人々を仰天させ、大きな話題となっているのは最強策士で戦略家、ジェイ・Z氏の計算のうちなのだろう。スーパーボウルはカリフォルニア州サンタクララで2月8日(日)に開催予定だ。

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