まるで「白雪姫と七人の小人たち」みたいなタイトルだが、先日ThreadsにLauryn Hill(ローリン・ヒル)と、まるで30年前の彼女と瓜二つの娘、Selah Marley(セラ・マーレー)の写真をシェアしたら、驚くほど反響があった。実は彼女、現在は4人の息子に2人の娘を持つ母親である。そのうち5人の父親は、なんとレゲエの神Bob Marley(ボブ・マーリ―)の息子で元フットボールプレイヤーのRohan Marley(ローハン・マーレ―)なので、血筋的にもヒップホップのレジェンドとレゲエのレジェンド両方の血を引いているのだ。Threads上で、彼女の家族関係に関する質問がちらほらあった上、どうやらまだ日本語で彼女の子どもたちを紹介している記事が無さそうなので、今回は伝説的ヒップホップMC/シンガーのローリン・ヒルと、彼女の6人の子どもたちついてDigってみようと思う。
ローリンの6人の子供たち、Zion(ザイオン)、Selah(セラ)、Joshua(ジョシュア)、John(ジョン)、Sara(サラ)、そしてMicah(マイカ)。彼女が長男ザイオンを妊娠中に名作『The Miseducation of Lauryn Hill』をレコーディングして以来、彼女のキャリアにおいて子ども達は重要な役割を担ってた。言わずもがなグラミー賞受賞アルバムに収録されている『To Zion』は彼女の代表曲の一つであり、子を持つ親として共感しかない神曲だ。
ヒップホップの女神は、『Miseducation of Lauryn Hill』の続編となるアルバムをリリースすることはなかった。その代わり、名声の絶頂期に、彼女はニュージャージー州サウスオレンジという、世間のスポットライトから離れた場所で子供たちを育てるため、活動休止を決断したのだ。子育て中は音楽活動を長らく中止していた彼女だが、近年こうして業界に舞い戻ってきたのも、子どもらの成長があったからこそ、である。
Zion Marley(ザイオン・マーレー)
人気絶頂期の1997年8月3日。22歳のローリンは長男ザイオンを出産し、母親になった。ヒップホップグループ「The Fugees」のメンバーだった彼女は、「ザイオンを出産したことで、本当に大切なものが何なのかに気付いたの」と当時ロサンゼルス・タイムズ紙に語っていたという。「キャリアのこの時期に、こんなに早く子供を産むことに反対する人がたくさんいたわ」
と、彼女は、母親になったことでワークライフバランスに変化が生じたと説明した。「『The Score』の成功後、妊娠7、8ヶ月だったから、突然ツアーを休まざるを得なくなったの。それが、私が自分の幸せを第一に考えた最初の出来事の一つだったわ」
時が経つのは早いもので、ザイオンはその後2024年のシングル『Best of Me』と2025年のシングル『Marching』で、母親と祖父の音楽的軌跡を辿っている。現在彼は、息子Zephaniah Nesta(ゼファナイア・ネスタ)と娘Azariah Genesis(アザリア・ジェネシス)という二人の子どもの父親だ。
Selah Marley(セラ・マーレー)
ローリンとローハンは1998年11月12日、娘セラを迎えた。W誌によると、彼女はマイアミ、ロサンゼルス、そしてニュージャージー州サウスオレンジ(母親ローリンの故郷)で育ったそう。母親の美しいルックスを引き継いだ彼女。実は2011年からモデルとしてのキャリアをスタートさせている。「父とホテルにいた時、ふざけて『ダディ、私モデルやりたいわ』って言ったの」と彼女はTeen Vogue誌に語っていた。「なんていうか、カメラが楽しいから」。それ以来、セラはCalvin Klein、Yeezy、Chanelのモデルを務めているという。
また彼女は母親の後を追うように、音楽活動も始めている。YouTubeで2枚のシングル『SLICK』(2024年)と『24HRS』(2021年)をリリースしている。「私が音楽が好きな理由は、自分の曲を作るだけでなく、他の人の音楽にも本当に惹かれるからなの」と彼女はW誌に語っている。「母が家にスタジオを持っていて、私はそこによく行ってたんだけど、母はいつも音楽を作っていて、ツアーでもいつも何かクリエイティブなことをしていた。だから、本当にインスピレーションを受けていたわ」
ローリンの娘だけあり、彼女の声も低く安定しながらも、ハスキーで耳心地が良い。声質は、若干母親より優しい感じがする。偉大な人を親に持つ子どもは、常に比較されるのが定めだが、彼女には音楽なりファッションなり好きな芸術分野で、思う存分自己を表現して羽ばたいてもらいたいものである。
Joshua Marley(ジョシュア・マーレー)/YG Marley(YGマーレー)
日本で一番知名度があるのが、この次男坊だろう。今年5月日本に来日し、YGマーレー名義でイベントのヘッドライナーを務めた。2001年12月5日に生まれた彼は、2023年の『Praise Jah In The Moonlight』を皮切りに、数々のシングルをリリースしている。2024年には、母親とタッグを組んでコーチェラ・フェスティバルの初週末に登場した。その後親子は『The Tonight Show』に出演し、彼女の1998年の名曲『Ex-Factor』と自身の曲2曲を歌い上げた。そのYG。2021年に、第一子となる息子Caleb(ケイレブ)が誕生し父親になった。彼のインスタグラムによると、その約2年後には双子も誕生したようだ。
正直、家系の音楽的才能を色濃く受け継いでいるのが、このYGだろう。レゲエの神(祖父)譲りの声、ネポベイビーらしからぬ、落ち着きと謙虚な姿勢。なのに垣間見える母親から受け継いだ意志の強さと孤高の気高さ。今後のリリースが期待される。
John Marley(ジョン・マーレー)
なかなかなイケメン君、三男坊のジョン・ネスタ・マーレーは2003年6月28日に誕生した。彼のミドルネームは、祖父のフルネームであるNesta Robert Marley(ネスタ・ロバート・マーレー)に由来しているそうだ。兄妹たちと同様に、ジョンも幼少期をスポットライトを浴びることのない静かな環境で育ったが、上の三人と異なり、音楽業界からは身を置いているようだ。ただ、お洒落が好きらしく、2019年には兄弟と共にラグ&ボーンのキャンペーンモデルを務めた後、自身のブランド『Kalm For The People』を立ち上げ、ファッション業界でのキャリアをスタートさせた。彼に関してはあまり情報が無いのが残念である。
Sara Marley(サラ・マーレー)
2008年1月8日生まれのサラ。彼女は2021年に自身のインスタグラムアカウントを開設し、セレブにアルバやジャマイカといった熱帯の地への旅行のスナップ写真を、頻繁に投稿している。また、2024年1月にはニューヨークのチプリアーニで1920年代をテーマにしたパーティーを開き、16歳の誕生日を盛大に祝ったそうだ。彼女のインスタグラムのハイライトによると、彼女はアスリートで、様々な陸上競技に出場したり、高校でバスケットボールをしたりしているそうな。ルックスもローリンとローハンの魅力的な部分を引き継いでいる彼女。これからどのように開花していくのか、楽しみである。
Micah Hill(マイカ・ヒル)
さて。見た目のみならず、子供たちの中で唯一母親の姓を引き継いでいる、マイカ。ローリンは、2011年7月23日、6人目の子どもであるマイカを迎えた。だがなんとなんと。ローリンはXで、ローハン・マーレーがマイカの父親ではないことを明言して世間を騒がせた。現在削除されたPeople誌のインタビューによると、「数々の報道とは異なり、マーレー氏は子どもを妊娠中に私を捨てたわけではないわ」と投稿に記していた。「私たちは長年にわたり別居していたんだけど、5人の子供たちと共に過ごす時間は、私たちにとって今も喜びなのよ」
そのマイカ君は、バスケットボールが大好きなようで、3年前の2022年7月の誕生日のお祝いには、バスケテーマの誕生日パーティーを主催し、NBA選手のDerrick Rose(デリック・ローズ)も出席したという。
ママ・ローリンの今後は?
子育てが一段落ついたのか、ヒップホップ界に舞い戻ってきてくれた我らの永遠の女神、ローリン・ヒル。近年あらゆるフェスやイベントに精力的に登場し、天使がラブソングを歌っているかようなソウルフルな歌声と、感情深い、歌詞の複雑さと技巧の高さが融合された安定のラップを聴かせてくれている。彼女の声はちっとも色褪せていないが、あのローリンが「お祖母ちゃん」になったという事実も、月日の経過の速さを実感させる。
先日Raekwonの新アルバムを投下した、Nas率いるMass Appeal Recordsからは、DJ Premier、Ghostface Killah、De La Soul、Mobb Deep、Big L、の6枚のOG侍(オジサムライ)たちのアルバムリリースが予定されているが、最後の刺客の、7枚目のアルバム『Legend Has It…』は誰だかまだ発表されていない。だがだが、まだ風の噂の、遠い憶測の段階でしかないが、Nasと昔から付き合いのあるローリンではないか?との噂も立っている。
と、いうことで。ママ・ローリン率いる、マーレー/ヒル一家の今後の活躍と健勝を祈念し、皆で乾杯しよう!