Logic『700 CLUB』|レビュー&解説

    Logic『700 CLUB』は、メロウなサンプリング・ソウルを基調にしながらも、鋭いライミングとストーリーテリングで聴かせるUSヒップホップの正統派トラックである。この楽曲はメリーランド出身のラッパーLogicが培ってきた叙情性とテクニカルなフロウの両立を、改めて鮮明に提示している一曲といえる。

    ビートはウォームなピアノループと厚みのあるベースラインが特徴的で、90年代のブームバップを彷彿とさせるノスタルジックなグルーヴを醸し出している。キックのパンチ力は控えめながら、スネアの抜け感が心地よく、リスナーを没入させる音響バランスが保たれている。上ネタには微かにストリングスの残響が漂い、全体をメロウに包み込むプロダクションはLogicのボーカルアプローチと見事に調和している。声質はクリアでありながら、どこか内省的な温度感を保ち、フロウの緩急も計算されたものだ。ヴァースではタイトなライミングでリリックを畳みかけ、フックでは反復を活かしたメロディアスな展開が印象に残る。

    リリックの世界観は自己の成功と葛藤、そして現在地を見つめ直すような内容を含んでおり、Logicらしい自伝的要素が散りばめられていると捉えられる。華美な自慢話ではなく、成熟したラッパーが自らのキャリアと向き合う姿勢が、楽曲全体に深みを与えている。HIPHOPCs編集部としては、この曲がいわゆるバンガーとは一線を画し、ヘッドフォンでじっくり聴き込みたい夜や、深夜のドライブといったパーソナルなリスニングシーンに最適であると評価したい。Logicが持つ技巧と情感のバランスが、リスナーに新たな一面を提示していると感じさせる仕上がりだ。


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