文:HIPHOPCs編集部
一言で言えば、名声を手にしてなお心に残る不在感を吐露した、内省と誇示が共存する一曲のように感じられる。Hurricane Wisdomの新曲「My Life」は、フロリダのラッパーがツアーと成功の日々を綴りながら、その裏にある孤独と喪失を同時に浮かび上がらせている。John LamとScoutmadeitによるプロダクションが、その両義性を支える土台となっている。
リリックとテーマの分析
本曲は「The Live Sessions Vol. 1」の最終トラックとして収録され、アルバム全体を締める位置に置かれている。コーラス冒頭で「My life like 2K, ball out every day」(俺の人生はバスケゲームのように毎日弾けている)と自らのライフスタイルを宣言する一方、第2ヴァースでは「I wish my life was yours, I ain’t been home in a while」(お前の人生だったらと思う、しばらく家に帰っていない)と繰り返すように読める。このコントラストが、成功の対価として支払う「不在」というテーマを際立たせている。
ビート面では、低域を支えるキックとベースラインが安定した推進力を生み出しつつ、上ネタとして配置されたシンセがメランコリックな残響を残す構成になっている。ハイハットの刻みは一定のグルーヴを保ちながらも、Hurricane Wisdomのフロウはその上でレイドバックと加速を巧みに使い分ける。声質は乾いた中音域で、感情を強く押し出すというより、淡々と事実を語る距離感を保っているように聴こえる。リリック内の「Cash rules everything around me, no way around it」という一節は、Wu-Tang Clanの「C.R.E.A.M.」を想起させるフレーズでありながら、その文脈をサバイバルから日常へ引き寄せて再提示しているとも捉えられる。また本曲はGritsとTobyMacによる「Ooh Ahh (My Life Be Like)」をサンプリング元とする情報があり、2000年代初頭のクリスチャン・ヒップホップの系譜と現代のサザン・ラップが交差する試みとしても位置づけられる。
編集部としては、この楽曲が「成功したラッパーの誇示」という定型から外れ、むしろその成功が生む孤立と疲弊を俯瞰的に描いている点に注目したい。ツアーで州を跨ぎ、ステージで報酬を得る一方で、「I ain’t been home in a while」と反復される言葉には、どこか自己暗示のような響きも宿っているように感じられる。音楽的には、ビートが過剰に華美にならず、ボーカルも叫ばない抑制が、リリックの内容と噛み合っている。フロリダのヒップホップが持つストリートとメロディの中間地点に立ちながら、Hurricane Wisdomは自らの置き場所を冷静に見つめているようだ。その静かな自己凝視が、本曲を単なる自慢話ではなく、ひとつの「記録」として機能させているのかもしれない。
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FAQ
「My Life」はどんなテーマの曲ですか?
成功と名声の裏にある不在と孤独を描いたトラックのように感じられます。ツアーや金銭的成功を語りつつ、「しばらく家に帰っていない」と繰り返す構造が、その両義性を強調しています。
どんな気分や場面に合う曲ですか?
深夜のドライブや一人で過ごす時間に寄り添う一曲です。派手な展開よりも、淡々とした語り口が心の内側を静かに照らすような雰囲気を持っています。
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※本記事はGeniusから取得した歌詞情報およびSpotifyの公開データを基に、HIPHOPCs編集部が独自の視点で執筆したレビューです。内容に関するご意見はお問い合わせまでお寄せください。
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