【USラップ決定版】いま最も”動いている”ラッパーは誰だ?アクティビティ指数で可視化(2025年12月第3週)
USヒップホップシーンは、21 Savageが新アルバム『WHAT HAPPENED TO THE STREETS?』と「F**k the Streets」ムーブメントで首位を独走。Travis Scottの新曲MVとスニーカー戦略、Kendrick Lamarのツアーとグラミー9部門ノミネートが続き、ベテランNas×DJ Premierの歴史的コラボも高評価。データから現代USヒップホップの多様な成功モデルが浮き彫りとなった。
今週の結論:21 Savageが総合1位、多様な戦略が交錯
今週のアクティビティ指数ランキングでは、21 Savageが140点で首位に立った。初週90,000ユニットという高いアルバム売上に加え、Young ThugとGunnaの和解を仲介した「F**k the Streets」ムーブメントがメディアとSNSの話題を独占。2位には、新曲MV公開とスニーカーリリースで話題を呼んだTravis Scottが132点でランクイン。3位は、ツアーの成功とグラミーノミネートで揺るぎない評価を得たKendrick Lamarが122点で続いた。
| 順位 | アーティスト | スコア | 今週のハイライト |
|---|---|---|---|
| 1位 | 21 Savage | 140 | アルバム初週90k売上、「F**k the Streets」ムーブメント主導 |
| 2位 | Travis Scott | 132 | 新曲「PBT」MV公開(1日220万再生)、新スニーカー同時リリース |
| 3位 | Kendrick Lamar | 122 | 「Grand National Tour」成功、グラミー賞9部門ノミネート |
| 4位 | Nas | 122 | DJ Premierとのコラボアルバム『Light-Years』、Rolling Stone等で絶賛 |
| 5位 | Drake | 118 | Spotify史上初1,250億ストリーム突破、カタログの圧倒的強さ |
Top 5 アーティスト深掘り分析
1位 21 Savage(140点)
今週のUSシーンの話題は21 Savage一色だった。ニューアルバム『WHAT HAPPENED TO THE STREETS?』のリリースに加え、「F**k the Streets」という強烈なメッセージを掲げ、シーンの分断を修復しようとする姿勢が大きな反響を呼んだ。
| 評価項目 | スコア | 分析 |
|---|---|---|
| Streaming | 18 | アルバム初週90,000ユニット売上。Spotify US 45位にランクイン。 |
| YouTube | 14 | MV活動は控えめ。過去作の安定した再生を維持。 |
| TikTok | 12 | 「F**k the Streets」がミーム化し、関連投稿が急増。 |
| SNS | 18 | ムーブメント主導。Instagram、Xで関連投稿が大量に拡散。 |
| メディア露出 | 20 | Billboard、HotNewHipHop、Complex等で大きく報道。 |
| リリース | 20 | 新アルバム『WHAT HAPPENED TO THE STREETS?』リリース。 |
| コラボ | 18 | Drake「MR RECOUP」客演。Young Thug・Gunna和解を仲介。 |
| 話題性 | 20 | 「F**k the Streets」ムーブメントがシーン全体に波及。 |
21 Savageは、単なるラッパーから「シーンのオピニオンリーダー」へと進化を遂げた。Young ThugとGunnaの件に介入し、ポジティブなムーブメントへと昇華させた手腕は、彼のブランド価値を音楽以上に高める結果となった。この「社会的影響力」こそが、今週の圧倒的1位の要因である。
2位 Travis Scott(132点)
Travis Scottは、得意の「音楽×ファッション×カルチャー」のクロスオーバー戦略で2位につけた。新曲「PBT」のMV公開に合わせ、自身のシグネチャースニーカーをドロップ。若年層を中心としたファンベースを熱狂させた。
| 評価項目 | スコア | 分析 |
|---|---|---|
| Streaming | 16 | カタログ楽曲の継続的な人気。新曲リリース直後で今後に期待。 |
| YouTube | 18 | 「PBT」MV公開。公開初日で220万再生を記録。 |
| TikTok | 14 | 「PBT」がTikTokで使用され始め、バイラルの兆し。 |
| SNS | 18 | Instagramで新アルバム制作中を発表。期待感を醸成。 |
| メディア露出 | 16 | Vibe、Soleretriever等でMVとスニーカーリリースを報道。 |
| リリース | 16 | 「PBT」MV公開。Tyla、Vybz Kartelを客演に迎える。 |
| コラボ | 16 | Tyla、Vybz Kartel客演。Jordan Jumpman Jackスニーカーリリース。 |
| 話題性 | 18 | 新アルバム制作中の情報リーク。ファンの期待値が急上昇。 |
Travis Scottの動きは常に「イベント」化されている。MVとプロダクトを同時に投下することで、視覚と物欲の両面からファンを刺激し、瞬間最大風速的なバズを作り出す能力は現行シーン随一だ。新アルバム制作中の情報もリークされ、期待値のコントロールも巧みである。
3位 Kendrick Lamar(122点)
ビーフの喧騒を離れ、Kendrick Lamarは純粋なアーティストとしての評価を積み上げている。「Grand National Tour」の成功に加え、グラミー賞9部門ノミネートが報じられ、批評家と大衆の両方から支持を集めた。
| 評価項目 | スコア | 分析 |
|---|---|---|
| Streaming | 18 | 「GNX」週間19,000ユニット売上。カタログ楽曲も根強く再生。 |
| YouTube | 16 | ツアーのライブ映像が多数アップロード。ファンの関心を維持。 |
| TikTok | 16 | 「Not Like Us」がTikTokで継続的に使用。ミーム化も進行。 |
| SNS | 14 | 本人の投稿は控えめ。謎めいたスタンスを維持。 |
| メディア露出 | 18 | Rolling StoneでGNX制作秘話公開。グラミーノミネート報道も多数。 |
| リリース | 10 | 今週は新リリースなし。 |
| コラボ | 12 | 「GNX」のコラボレーターが話題に。SZAとの楽曲が評価高い。 |
| 話題性 | 18 | 「Grand National Tour」Top 5入り。グラミー9部門ノミネート。 |
派手なSNSパフォーマンスを行わずとも、作品の質とライブだけで話題を維持できる稀有な存在。Rolling Stoneでの制作秘話公開など、メディア露出の質も高く、批評家と大衆の両方から支持を集める「王道」の強さを見せつけた。
4位 Nas(122点)
90年代からのリリシストNasが、盟友DJ Premierとのフルアルバム『Light-Years』をついにリリース。長年のヒップホップファンの夢を叶えるこのプロジェクトは、シーンに重厚なインパクトを与えた。
| 評価項目 | スコア | 分析 |
|---|---|---|
| Streaming | 16 | 『Light-Years』週間21,000ユニット売上。コア層が熱狂的に支持。 |
| YouTube | 12 | 公式MVを公開。安定した再生数を記録。 |
| TikTok | 8 | TikTokでの使用は限定的。若年層へのリーチは弱い。 |
| SNS | 12 | Instagramでアルバムをプロモーション。 |
| メディア露出 | 18 | Rolling Stoneで高評価レビュー。「Real Hip Hop復活」と報道。 |
| リリース | 20 | DJ Premierとのコラボアルバム『Light-Years』リリース。 |
| コラボ | 20 | DJ Premierとの歴史的コラボ。長年のファン待望のプロジェクト。 |
| 話題性 | 16 | 「Real Hip Hopの復活」というメッセージがコア層に響く。 |
NasとDJ Premierのタッグは、数値以上の重みを持つ歴史的イベントだ。トレンドを追う若手とは一線を画し、ブーンバップの美学を貫くことで、コア層からの熱狂的な支持(エンゲージメント)を引き出した。TikTokでの弱さは課題だが、それを補って余りある「レジェンドの威光」がある。
5位 Drake(118点)
新譜のリリースがないにも関わらず5位にランクインしたDrake。その理由は、Spotifyでの「1,250億ストリーム突破」という前人未到の記録だ。過去のヒット曲が常にチャートに居座り続ける「カタログの強さ」だけで上位をキープする底力は驚異的である。
| 評価項目 | スコア | 分析 |
|---|---|---|
| Streaming | 20 | Spotify史上初1,250億ストリーム突破。「Take Care」週間24k売上。 |
| YouTube | 14 | カタログMVの継続的な再生。新規動画なしでも安定。 |
| TikTok | 14 | 「Headlines」「Hotline Bling」等がTikTokで継続使用。 |
| SNS | 12 | 投稿は控えめ。沈黙を保つスタンス。 |
| メディア露出 | 18 | 1,250億ストリーム突破がBillboard等で大きく報道。 |
| リリース | 8 | 今週は新リリースなし。 |
| コラボ | 16 | 21 Savage「MR RECOUP」に客演。 |
| 話題性 | 16 | Kendrick Lamarビーフの余波。沈黙が逆に話題を呼ぶ。 |
Drakeはもはや「インフラ」に近い存在となっている。新曲を出さずとも、世界中のプレイリストで彼の曲が再生され続け、自動的に収益と話題を生み出すシステムが完成している。ビーフの余波さえも話題性に変えてしまうタフさも健在だ。
週間アクティビティ指数 Top 15(2025年12月12日〜21日)
| 順位 | アーティスト | 合計 | Str | YT | TT | SNS | メディア | Rel | Collab | Buzz |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 21 Savage | 140 | 18 | 14 | 12 | 18 | 20 | 20 | 18 | 20 |
| 2 | Travis Scott | 132 | 16 | 18 | 14 | 18 | 16 | 16 | 16 | 18 |
| 3 | Kendrick Lamar | 122 | 18 | 16 | 16 | 14 | 18 | 10 | 12 | 18 |
| 4 | Nas | 122 | 16 | 12 | 8 | 12 | 18 | 20 | 20 | 16 |
| 5 | Drake | 118 | 20 | 14 | 14 | 12 | 18 | 8 | 16 | 16 |
| 6 | Polo G | 112 | 14 | 12 | 10 | 12 | 14 | 20 | 16 | 14 |
| 7 | Cardi B | 108 | 16 | 12 | 12 | 14 | 14 | 16 | 10 | 14 |
| 8 | Don Toliver | 106 | 14 | 12 | 12 | 12 | 12 | 16 | 16 | 12 |
| 9 | Young Thug | 106 | 12 | 10 | 12 | 16 | 18 | 8 | 12 | 18 |
| 10 | Pooh Shiesty | 104 | 14 | 12 | 12 | 12 | 12 | 18 | 10 | 14 |
| 11 | Dave East | 98 | 12 | 12 | 8 | 12 | 12 | 18 | 12 | 12 |
| 12 | Lil Baby | 98 | 16 | 12 | 10 | 12 | 12 | 14 | 10 | 12 |
| 13 | DaBaby | 96 | 12 | 12 | 10 | 12 | 10 | 18 | 10 | 12 |
| 14 | Logic | 94 | 12 | 12 | 8 | 12 | 10 | 18 | 10 | 12 |
| 15 | Conway the Machine | 94 | 12 | 12 | 8 | 12 | 10 | 16 | 12 | 12 |
※凡例:Str=Streaming / YT=YouTube / TT=TikTok / Rel=Release
※データ取得日:2025年12月22日(JST)
今週のシーン分析:社会的メッセージとカタログ資産の二極化
今週のUSシーンは、21 Savageのように社会的メッセージを発信してシーンを動かす「アクティブな影響力」と、Drakeのように既存の資産でチャートを維持する「パッシブな影響力」の対比が鮮明だった。
Travis Scottは、音楽とファッションを連動させるクロスオーバー戦略で独自のポジションを確立。Kendrick Lamarは、派手なSNS活動なしに作品の質とライブだけで評価を維持する「王道」を示した。そしてNasは、トレンドを追わずブーンバップの美学を貫くことで、コア層の熱狂を引き出した。
USヒップホップシーンには、複数の成功モデルが並存している。今週のランキングは、その多様性を可視化したものと言える。
来週の予測:クリスマス商戦と新リーク情報
- 21 Savage:「F**k the Streets」ムーブメントがさらに拡大し、メディア露出が増加する可能性
- Travis Scott:新アルバムに関する情報がさらにリークされ、期待感が高まる
- クリスマス曲の影響:年末に向けてMariah Carey等のクリスマスソングがチャートを独占するため、Hip-Hop楽曲は一時的に順位を下げる可能性
- Kendrick Lamar:グラミー授賞式に向けた動きが活発化する可能性
アクティビティ指数の定義(US版)
本ランキングは、以下の8項目を各20点満点、合計160点満点で評価し定量化したものである。
- Streaming:Spotify/Apple Musicのチャート順位、週間売上ユニット数
- YouTube:MV/Audioの再生数、トレンド入り、チャンネル登録者数の推移
- TikTok:楽曲使用数、バイラル度、ダンスチャレンジ、ミーム化
- SNS:Instagram/Xでのエンゲージメント、フォロワー増加、投稿頻度
- メディア露出:Billboard、Complex、Rolling Stone、XXL等の主要メディア掲載
- リリース(Release):新曲・アルバム・EPのリリース規模とインパクト
- コラボ(Collab):フィーチャリング、プロデュース、異業種コラボレーション
- 話題性(Buzz):ビーフ、社会活動、ゴシップ、ミーム化、シーンへの影響
編集方針と免責事項
- 目的:本記事は、データに基づいた客観的な視点を提供することを目的としています。
- データソース:Spotify Charts、Billboard、各SNS公開データ、主要音楽メディア。
- 免責事項:スコアは活動量を測る指標であり、芸術的優劣を決定するものではありません。
- 更新頻度:本シリーズは毎週日曜日に更新予定です。
参考文献
Streaming / Charts
- Spotify Charts – Official
- Ratings Game Music: 21 Savage Leads the Way as Hip-Hop’s Highest-Selling Albums Hold Strong This Week
- Ratings Game Music: Drake Becomes Spotify’s First Artist to Surpass 125 Billion Streams
Media(大手音楽メディア)
- Billboard: 21 Savage Says He Advised Drake Not to Respond to Kendrick Lamar
- Rolling Stone: Nas and DJ Premier’s ‘Light-Years’ Review
- Rolling Stone: Kendrick Lamar Collaborators Reveal How He Made ‘GNX’
- Vibe: Travis Scott Taps Tyla And Vybz Kartel For “PBT” Video
Social Media / YouTube / TikTok
- Travis Scott Instagram Post (Official)
- Travis Scott – “PBT” Official Music Video
- Kendrick Lamar – Official YouTube Channel
- TikTok Music & Trending Sounds (Global)
