西海岸とサウスを代表するOG 達が、それぞれ新アルバムをドロップしたのでお知らせする。
Ice Cube 『Man Up』
俳優として大活躍、その上起業家、そして言わずもがなヒップホップ界のアイコンであるIce Cube(アイス・キューブ)が、12枚目のスタジオ・アルバム『Man Up』を9月13日リリースした。Lench Mob RecordsとHitmaker Distributionを通じて、すべてのデジタル・ストリーミング・プラットフォームで配信中だ。キューブとTony Draper(トニー・ドレイパー)がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた全14曲収録のこのアルバム。昨年チャートを席巻した『Man Down』に続くキューブの政治、文化、そして歴史に対する妥協のない批評をさらに深めている。ヒップホップが再び世間の厳しい視線にさらされている今、この2つのプロジェクトは鋭いメッセージを発しているのだ。
リードシングル『Before Hip Hop』では、このプロジェクトの緊迫感を体現している。轟音のようなプロダクションに乗せて、キューブはラップが都市の暴力を生み出したという、ありがちな非難を覆している。彼はその議論を避けるのではなく、犯罪と不正がヒップホップ文化の遥か昔から存在していたという歴史を証拠として、正面から立ち向かっている。
NWAのレジェンドラッパーは、『Four Decades of Attitude Tour』を予定し、北米各地のアリーナを制覇予定だ。ツアーは9月16日のデンバーを皮切りに、シアトル、オークランド、ロサンゼルス、グレンデール、シカゴ、トロント、アトランタ、オースティン、ヒューストンを巡るという。
Jermaine Dupri『Magic City』
お次は南部ATLの大御所、Jermaine Dupri(ジャ―メイン・ドュプリ)だ。なんとこの大物プロデユーサー、2001年の『Instructions』以来のソロ・プロジェクトとなる、15曲収録の最新アルバム『Magic City』で華々しくカムバックを果たした。
まだアトランタでトラップブームが起きる前。伝説のプロデューサー、ソングライター、そして時折ラッパーとしても活躍するデュプリは、1990年代から2000年代初頭にかけて、Usher(アッシャー)、Jay-Z(ジェイ・Z)、Mariah Carey(マライア・キャリー)などなど、数えきれないアーティスト達のヒット曲を手掛け、その才能を開花させた。そして今、アトランタのナイトライフとストリップクラブ文化を称え、街の多様な才能にスポットライトを当てたプロジェクトを携えて帰ってきたという。彼は時代を超越したR&Bやヒップホップのヒットを生み出すことで知られているが、『Magic City』は従来のソロ・アルバムというよりも、活気に満ちたコンピレーション・アルバムのような作品であり、2018年の『A So So Def Christmas』のような感じである。
このプロジェクトには、T.I.、2 Chainz、Young Droとの『Turn Around』、JMoney、YoungBloodzのSean Paul、BunnaB、Bankroll Niが参加している『Magic City Money』など、パワフルなコラボ曲が多数収録されている。今週初め、デュプリはRich Homie Quan(リッチ・ホーミー・クアン)との曲『This or That』をリリースした。この曲は、故ラッパーの功績を称えるとともに、彼がアトランタの文化に与えた永続的な影響への心からのトリビュートとなっているという。その証拠に、デュプリ自身が「このアルバムは単なる音楽じゃないんだ。アトランタの物語なんだよ」と語っている。
アルバムの目玉となるCeeLo Green(シーロー・グリーン)をフィーチャーした『Atlanna』は、街の誇り、回復力、そしてスピリットを、まさにアトランタ流に捉えている。シーローのソウルフルなボーカルとデュプリならではのプロダクションが重なり、この曲は街のアンセムとして確固たる地位を築いているといえよう。
さらっとレビュー
さて。筆者の個人的な感想だが、アイス・キューブ氏の方はフィーチャリングも少なく、文字通りキューブのラップを堪能するアルバムとなっている。彼の従来のスタイルが好きなファンや、西海岸のあの雰囲気を求める分には期待を裏切らない内容だが、もしかしたら若干物足りないというリスナーも多いかもしれない。反してジャ―メイン・デュプリの新アルバムは、流石というか、曲やアーティストによってビートや雰囲気がガラリと変わり、各アーティストの良さが多分に生かされた、聴き応えがある内容となっている。名プロデューサーデュプリの手腕が光っている超オススメの逸品だ。とりあえず音好きは、両アルバム聴いてみてくれ!