現在全米で自身の映画『Stans』が公開中のEminem(エミネム)。なんと映画ののサウンドトラックに未発表曲『Everybody’s Looking At Me』を収録したというので、HiphopCsヘッズに紹介したい。
その前に、映画『Stans』について説明する。エミネムがプロデュースし、Steven Leckart(スティーブン・レッカート)が監督を務めたこのドキュメンタリー。エミネムの2000年の名曲『Stan』に由来しており、熱烈で時に危険なファンの献身を描いているという。この歌は、架空のファンの、極端な執着が悲劇的なクライマックスへと導く様子を描き、熱狂的なファンを表す「スタン」という言葉を生み出した(「スタンズ」はその複数形)。2017年にはかのオックスフォード英語辞典にも載った単語だ。そして同映画は、現代のファンダム現象と、アーティスト、熱心なスーパーファンの間のパラソーシャルな関係性を検証し、エミネムのファンの個人的な体験談や、エミネム本人へのインタビューを交えながら描いている。また映画の中で彼は、取り壊される前に幼少期を過ごした家を買い戻そうとしたことを明かしているという。エミネムファンの聖地巡礼地とて有名なデトロイトのこの家。しかし、当局が既に家屋を没収処分にしていたためこの試みは失敗に終わり、その後、家屋は取り壊されたそうだ。現在ここは空き地となっている。
ニューヨークでのプレミア上映に予告なく登場したラップの天才は、こう述べていた。「なぜこれが俺にとってクレイジーなのか、説明させてくれ。『Stan』という曲を書いていた時、自分の音楽が人々に与えている影響を理解し始めたばかりだったんだ。そして、自分のキャリアを通して、人々に影響を与えることができたという事実を振り返ると、本当にクレイジーだ」彼はこう付け加えた。「俺も君たちを愛している。一体何を言ってるんだろうって考えてみたんだ…この曲を書いていた時は、自分の音楽が人々にどれほどの影響を与えているのか理解していなかった。本当に非現実的だった。そして今こうして外を見て、みんなの姿を見て、自分の音楽がみんなにインスピレーションを与えているという事実を思うと、今でも非現実的だ。この映画は、これまでずっと俺を支え続けてくれたみんなへの感謝の気持ちを込めて作ったんだ」
さて。同曲だが、Dr. Dre(ドクター・ドレ)がプロデュースしたこの曲の最初のヴァースは、2002年のFunkmaster Flex(ファンクマスター・フレックス)のフリースタイルから引用されたもので、後にエミネムがフルソングとしてアレンジしたそうだ。かなりキャッチ―なイントロ、ノリの良いビートと、エミネムの活気あふれたストーリーテリングでスキルフルなラップ。これらがブレイズのように一緒に編み込まれた一級品だ。
同曲で、エムはグラミー賞授賞式で大御所Elton John(エルトン・ジョン)と 『Stan』をデュエットした際の象徴的なパフォーマンスに触れている(3:06あたり)。「“Oh God, he’s on stage with Elton John! He’s got a motherfucking pink GLAAD T-Shirt on, huggin’ a homosexual flippin’ the cameras off / But at the Grammys? Thought Slim hated the Grammys / No, I said, ‘You think I give a damn about a Grammy?’ / You never answered me.”(オーゴッド、奴はエルトン・ジョンとステージに立っているぜ! クソみたいなピンクのGLAAD Tシャツを着て、同性愛者に抱きついてカメラに中指を立ててる/でもグラミー賞では? スリムはグラミー賞が嫌いだと思っていたぜ/いや、俺は言ったんだ。『俺がグラミー賞なんかどうでもいいと思ってんのか?』って/お前は俺の答えに一切答えなかったな)
本映画の日本上映に関する情報は現時点で無いが、今現在映画評論サイトの『Rotten Tomatoes(ロッテントマト)』では、批評家評価93%、観客評価94%との高評価を得ている。何とこれは、現時点でロッテントマトとIMDB両方で、2025年の最高評価映画となっているのだ。観る価値は十分あるので、日本での上映を願おう!新曲を聴くのも忘れずに!