我が名はSei!ネットの果てよりこの地に来た!そなたたちは、HiphopCsを閲覧しているという、耳の肥えたヒップホップの民か!?
さて。歌詞の巧みさでは右に出る者がいない、巨匠Eminem(エミネム)。現在彼は、持ち前の巧緻を極めたラップで、昨今の目に余る言動と行動で物議を醸しているKanye West(カニエ・ウェスト)を口撃したので、その曲を紹介する。
ATL(アトランタ)出身、且つこれまた緻密な歌詞と韻踏みで有名なJID(ジェイ・アイ・ディー)。この中堅ラッパーは、2025年8月8日にリリース予定の待望のアルバム『God Does Like Ugly』の前哨戦として、先週の米国独立記念日に『Preluxe』をリリースした。2017年からJ.Cole(J・コール)のDreamvilleに所属している彼の楽曲は、我らヒップホップファンが期待していた通り、ハイクオリティな作品となっている。4曲入りのEPには、6LACK(ブラック)やLil Yachty(リル・ヨッティ)がフィーチャリングされており、さらにJIDがエミネムの最新アルバム『The Death of Slim Shady』の代表曲『Fuel』に参加したことを受け、エミネムもその恩返しとして新曲を収録しているのだ。
『Animals (Pt. I)』と題された同曲。リリカルラッパー二人が高度なテクを披露し、それぞれ約3分に及ぶ複雑なヴァースを披露している。エムは複数の人物を批判しているものの、自身のヴァースの中で最も物議を醸しているのはカニエ・ウェストに関する部分だ。
「With these magazines, I act out like Ye and his cousin / Little cocksucker, I’m sprayin’ and bustin’ / Your shit sucks dick, stop sayin’ it doesn’t / That’s probably the reason there’s nothin’ you’ve bodied of recent. (この雑誌を手に、俺はイェと奴のいとこみたいに振るまうぜ/ちびっこチ〇コ吸い野郎、俺は噴射して漏らしちまうぜ/チ〇コ野郎お前のクソは最低だ、違うなんて言うんじゃねぇ/それがお前が最近なんも体現してねぇ理由だろ)」(3:43あたり)
と、この長大なヴァースの3分の1ほどでスピットしている。もちろんこれは、カニエの曲『Cousins』への直接的な言及である。以前紹介したが、この曲でイェは、幼い頃に同性の従兄弟と近親相姦的な性的関係にあったことを告白していた。
そして、巨匠と比較しても遜色ないJIDのフロー。彼のラップスタイルは、予測不可能で複雑な言葉遊びと韻踏み、そしてオリジナルでダイナミックなフロウが特徴である。いやはや。舌を噛まず、つまづきもせず、よくこんなに滑らかにラップができるものだ。息継ぎもちゃんとしているのだろうか?これだけで、充分聴きごたえのある巧技となっている。
筆者も大好きなラップサイエンスの専門家、Mazbou Q(マズボー・Q)先生曰く、彼は「『へミオラ』と呼ばれるテンポの速い歌唱法、内韻(文末や文始だけでなく、文の途中にある単語同士で韻を踏むこと)、そして三連符の強弱を操るトリプルフロウを駆使している」という。本曲も、二人が織りなす歌詞の正確さとメロディックなフレージングが独自に融合した、秀逸としか言いようがない作品である。
では、再度問う!そなたたちは、HiphopCsを閲覧しているという、耳の肥えたヒップホップの民か!?ならば、我らの耳とハートが喜ぶ高度な技を、曇りなき眼(まなこ)と耳で見(聴き)定めるのだ!