BLAISE(ブレイズ/kiLLa・BSTA)とD-SETO(ディー・セト/EVIL MINDS RECORDS・sutari forest)によるジョイントEP『HUMAN JUNCTION』が、2025年6月16日にリリースされた。
“ヒューマンジャンクション”というタイトルが示す通り、この作品は、東京・渋谷を拠点に活動するBLAISEと、青森出身のD-SETOという異なる背景を持つ二人が出会い、生み出した共鳴の記録です。この二人本当にフロウが半端じゃない。
全曲のプロデュースは、岡山在住のKAY DIEGOが担当。US南部や西海岸のレイドバックな空気感を纏ったビートに、二人のラップが見事に溶け込んでいる。
都市と地方、世代と個性──それぞれが交差する“ジャンクション”として生まれた今作について、お二人にお話を伺った。
出会いのきっかけと、コラボに至るまで
Ito: お願いします、まず今回のジョイントEPの制作に至ったきっかけをぜひ教えて欲しいです。
D-SETO:たしか4年前くらいですね。エイジアで初めて話したときに、僕の「Like a Dirty R.A.Y」という曲をBLAISEくんが気に入ってくれてて。
元ネタがベイエリアのCelly Celっていう90年代のラッパーで、その話や、ビートを作ってくれたKAY DIEGOって子が若いのにBAYとかUS南部のフレイバ入れたトラックをいっぱい送ってくれてる話なんかをしてたら、BLAISEくんが「こういうの一緒にやったら新しいかも」って興味持ってくれて。
「じゃあやろうよ」って自然な流れで始まった感じです。
彼のことはkiLLaで登場してた頃から知ってたので、若いのにすげー子いるなと思ってた。だから逆に自分を知っててくれてたのが驚きでした。
Ito:自分も友達に紹介したらみんなハマってて。BLAISEさんとの初対面や第一印象を覚えていますか?
D-SETO:歳下なんですけどすごくしっかりしてるなと、初対面の日にラップの話になった時も意見的に合致した部分が多かったのでシンパシーを感じました。
BLAISE:すごく謙虚な方で、音楽や自分自身との対話を沢山してきた方なんだなという印象でした。
Ito:初めて会った日からビジョンが同じだったんですね。『HUMAN JUNCTION』というテーマに対する、お二人それぞれの捉え方を宜しければ教えて頂きたいです
D-SETO:自分は地方出身で東京在住ですが郊外に住んでて車で高速乗って東京の西から東に向かうまでに感じた事があって
田舎もんだからこその表現なのかも知れないんですけど首都高の複雑さが都心部が心臓だとすると合流したり出口が色々あったり血管が入り乱れてるんじゃないかと思うくらい都度難易度を感じまして。テンパっちゃうくらい笑 まあ自分が慣れてなくて下手くそなんですけど笑
青森いた頃は三沢から弘前行くにしても高速乗ってただぶっ飛ばせば着くくらいで複雑さは感じなくてこれはやっぱインターチェンジだけの経験とジャンクションがあるかないかの違いなんでしょうけど今回このEPラッパー陣とビートメイカーでそれぞれ住んでる場所も育ちも違うなかそれぞれの価値観や人と人との経験談などを音とリリックに落とし込んで作品にしててそれが各々人間関係の複雑さだったりで。この感覚を例えるのであれば音を通じてエネルギーの中心部東京から地方へと、そして地方から東京っていうまさに音と人の循環を表すテーマとしてもってこいだなと思いました。
BLAISE:東京の街は海外から来た人も地方から来た人もごちゃごちゃになっていて、その様子がぼくにとっては1番イメージ出来ました。
Ito:凄いこだわりを感じました。音楽に対する姿勢が最近出てきているラッパーを圧倒してると感じていまして。ほんとに。東京、青森というルーツの違いが、お二人の音楽的な相性や化学反応に影響などはありましたか?
D-SETO:自分が育った根っこにある音楽スタイルって変わらないと思うし無理して変えてもボロが出ると思うしハタから見ても無理矢理かっこつけた感満載でバレバレだから僕は上京してもイナたさ全開でスタイル貫いてたんですけど、今回BLAISEくんがもろこっち側のスタイルに寄り添ってくれたのがかなり新鮮だと思うし彼としても今まで触れた事のないスタイルでのラップだけど彼の持つグルーブをかなり引き出せたと思う。特に4曲目の調子 a Get Upでのラップの乗せ方はマジで気持ち良すぎる、KAY DIEGOのバックトラックもBAYと南部で馴染みはないかもしれないけどルーツは90’sのHIPHOPなのでやっぱBLAISEくんのラップのスタイルに合うんですよ。 彼のJab Stepで魅せたあの渋さを今回別角度、別スタイルで出せて聴けたのは個人的にですがマジでコラボして良かったと思いました。
Ito:なるほど。自分も聞いてて思ったのですがhuman junctionもそうで、海で流したいなぁと思いながら とくにフロウはお二人ともの音楽への愛というか、かけてる時間というか、何故か聞いたら自分が一発でくらっちゃう感覚が大好きで。お互いに「低い声」と独特なフロウが持ち味だと思いますが、お互いのラップスタイルをどのように評価していますか?
D-SETO:BLAISEくんはローボイスを活かしつつハンマーでぶっ叩くように言葉をハメるラップがマジでかっこいいと思うオンビートもオフビートも使いこなせてるけど、オフビートのラップが段違いで心地良すぎる。生まれ持ったリズム感が凄いと思う。
BLAISE:SETO君のラップスキルは間違いなく日本トップレベル、世界に通用するラップだと思います。 音感、リリックともに面白さ満点でさらきスタイルを貫き通しながら進化を続けてる姿がとても素敵だと思います。
Ito:ハンマーでぶったたく笑BLAISEさんのフロウの中にたまにガツンとくるワードでそんな感覚あります。私も1リスナーとして、間違いなくトップレベルだと胸を張って紹介できます。あとはやはりフロウ面で特に意識した点や、挑戦したことがあれば是非。
D-SETO:ここ数年他の作品でもそうですけどテクニックに囚われず聴き取りやすさを優先して構築した感はあります。
Ito:なるほど、確かにD-SETOさん持ち味プラスっていう感じが今回のアルバムにあったよう感じます。それぞれが“自分の声”や“言葉のリズム”を最も活かせた曲とかこだわったリリックはいかがでしょうか?
D-SETO:1曲目のHUMAN JUNCTIONこれはBLAISEくんパートがカッコ良過ぎて4回書き直してやっと満足のいくリリックになった感じですね。リリックは
結局のところ どん底ん時も
誰が変わらずに居てくれたかだ
損得よりも恩と徳
気持ち梱包 即届く
心奥のポストにそっと置く
かつての孤独だと思ってた気持ちも取っておく
Ito:4回書き直しですか。やはり、対抗心的なものが生まれてるというか。ほんとにみなさん聞いてみてください。制作中に「これは絶対に入れたい」と思ったワードやテーマはありましたか?
D-SETO:やっぱジャンクション言うだけあって車を連想させるワードは各曲に散りばめたと思います。
Ito:なるほど.ジャンクション柱でアルバムの中にあるというか。レコーディングや制作中に印象的だったエピソードなどあれば是非。
D-SETO:MIXは南部とベイ特有のスネアとハットの鳴り
を意識してエンジニアさんに注文を出しました。
日本では未だに鳴りとして定着してなかったのと
スケジュール的に立ち合いも出来なくて曲によっては中々イメージ通りにいかないのもあったので何度も何度も修正依頼した曲もあります。
理想通りに形にしていただけたのでエンジニアさんには感謝です。
1曲目のHUMAN JUNCTIONはバージョン1としてのオケが手元に届いたのが2021年で着手してから別のラッパーさんとまさかの上ネタ被りが判明したのでKAY DIEGOに違うバージョンとして弾き直してもらったらバージョン1より格段に良い状態で返ってきたのでそのまま採用しました。
現場としては一緒にスタジオ入った年に自分の子供が産まれたばかりで睡眠不足だったので寝ないようにカフェインのタブレット飲もうと思って容器から出したらBLAISEくんにヤバイクスリ飲んでると思われたこと。
あとやっぱ一緒に作ろうぜ!ってなってから自分の生活がガラッと変わってしまって1日の時間割も変わってしまったのでそこに合わせていただけてくれたし
思うように動けなかったのにも関わらずBLAISEくん、KAY DIEGOが完成を信じて真摯に対応してくれたのは本当感謝だしリリースまでに3年もかかってしまって本当に申し訳ないという気持ちもありますね。
最後の最後まで律儀に対応してくださった2人に改めて感謝です。
Ito:3年ですか!?かなり温めて遂に!という感じでしょうか。制作期間中のプライベートな変化を率直に語りつつも、BLAISEさんとKAY DIEGOさんの支えに対して「感謝」という言葉を何度も口にされていたのが印象的で。「一緒に作ろうぜ」と言ってくれた相手が、最後まで信じて待ってくれたことが、このEP『HUMAN JUNCTION』の人と人の交差点というテーマを、最も体現しているなあと。では最後に今後お互いにやってみたいプロジェクトや挑戦したいコラボレーションがあれば。
D-SETO:お互い得意のダーク路線でバッチバチバンガーかなやっぱ。
Ito:それは本当にみてみたいです。自分もずっとヘッズなので笑 申し訳ないです、最後の最後にお話し変わるんですが、最近ハマっていることとかってありますか?
D-SETO:育児と家事と我慢すね
Ito:漢ですね..この度は本当に貴重なインタビュー。応じて頂いて心よりありがとうございました。
是非とてつもないフロウここからチェック、ほんとにハンマーでぶったたかれる。保証します。