温故知新。すなわち、過去の事柄を知り、そこから新しい知識や見解を得ることを意味する、四字熟語。過去を知ることで、それに基づき現実に起きている問題を認識したり解決する知恵を編み出し、そして未来を作り出していく。Hip-Hop(ヒップホップ)の歴史は以前も本サイトの記事で何度か触れたが、Paramount+(パラマウント・プラス)が、近日公開予定のドキュメンタリーシリーズ『Hip Hop Was Born Here(ヒップホップはここから生まれた)』の予告編を正式に公開した。ヒップホップの起源と文化的影響を力強く探求するこの番組のホストは、ラップ界のパイオニアであり、ロックの殿堂入りを果たしたレジェンド、LL COOL J(LLクールJ)である。
2023年に50周年を迎えたヒップホップというジャンルを背景に、ニューヨーク市におけるヒップホップの起源を探る5部構成のこのドキュメンタリーシリーズ。ブロンクスのブロックパーティーから世界的大流行に至るまで、ヒップホップの誕生と発展を視聴者に紹介する。ヒップホップ文化の初期の商業的躍進を支えたスーパースター、且つ、業界の大御所中の大御所、LLクールJが、ジャンルのルーツ、勃興と隆盛、そして現代社会での意義を、没入感たっぷり描き出すこの番組のガイド役を務める。LLの本プロジェクトへの参加が、作品の真髄を捉えているのは確かだが、彼と一緒に盛り上げている元フットボール選手のPayton Manning(ペイトン・マニング)のアウトサイダー的な好奇心が、新鮮で敬意に満ちた視点とフレイバーを加えているそうだ。ちなみに二人は同番組の共同クリエーターでもある。
同番組だが、表面的なノスタルジアにとどまらず、この文化の誕生と永続的な影響の層を掘り下げているのが特徴だそうだ。LLはヒップホップのOGら、新進気鋭のスター軍、プロデューサー陣、そしてトレンドセッターたちとタッグを組み、それぞれのストーリーや貴重な洞察を披露する。象徴的なエリアや伝説的なスタジオへの訪問から、ヒップホップの歴史を変えたトラックについての議論まで、このシリーズは今日のヒップホップを形作った音楽、ムーブメント、そして人々に光を当るという。
また、このシリーズでは、ヒップホップが単なるサウンドにとどまらず、言語、ファッション、政治的勢力、そして生き方へとどのように成長してきたのかを探るそうだ。Big Daddy Kane(ビッグ・ダディ・ケイン)、Doug E. Fresh(ダグ・E・フレッシュ)、Rev Run(レヴ・ラン)、Method Man(メソッド・マン)、Roxanne Shante(ロクサーヌ・シャンテ)といった先駆者たちへのインタビューが、この物語に命を吹き込んでいる。彼らは、自身のキャリアを決定づけ、このジャンルの遺産を形作ったトラックを振り返りながら、その伝統を受け継ぐ新しい声にスポットライトを当る。
故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、温故知新とは、中国の思想家、孔子が「論語」で述べた言葉である。音であれ言葉であれ美術であれ、はたまた何かの企画であれ、今までに誰も見たことも聞いたこともない新鮮な何かを作るには、皆、古いモノを捨てて、新しい何かをしなければならないと思っているだろう。だが、無理に新しいことを創出するよりも、過去や昔の物の中に、何らかのヒントが隠れていることも、あったりする。ヒップホップのサンプリング文化などは、その最たる例なのかもしれない。
7月22日にアメリカ、カナダ、ラテン アメリカ、ブラジルでのパラマウント・プラスで初公開され、翌日23日には世界各国で公開するそうだ。日本でもパラマウント・プラスは視聴できるそうなので、ヒップホップヘッズは必見だ!今からカレンダーにリマインダー設定をしておこう。