2025年に最も売れたラップアルバム『GNX』。
ケンドリック・ラマーの新作は、「Luther」「Peekaboo」「TV Off」といったヒット曲を引っさげて、圧倒的な支持を得ている。にも関わらずだ。
その絶頂期にあっても、ラマーは「毎日負けている」と語った、
その姿は、下記のGatoradeの新CMで鮮烈に描かれている。
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白黒映像の中で映し出されるリアルな姿
新たに公開されたGatoradeのCMは、白黒の映像から始まる。
ラマーは仲間たちとワークアウトに励み、汗とともにGatoradeの液体が顔に流れる。
その色だけが唯一、鮮やかに映る。飲んだフレーバーごとに、色が変わる仕掛けだ。
バックで流れるのは、自身の楽曲「Peekaboo」。
その中でラマーはナレーションを通じて、自分が日々味わう「敗北」について語っている。
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問いかけ:「どれだけ負けられるか?」
「どれだけ負けられるか?」
この一言が、CMのテーマを象徴している。
Gatoradeの創業年である1965年にも触れつつ、ラマーは「失敗こそが成長の糧」であると伝える。
それはアスリートだけでなく、アーティストにとっても同じこと。
挑戦を重ね、敗北を重ね、それでも前に進む姿がそこにはある。
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Gatorade×音楽:ブランド60周年の大胆なシフト
今回のキャンペーンは、Gatoradeの新しいスローガン「Lose More. Win More.」の一環である。
創業60周年を記念し、これまでアスリート中心だったブランド戦略を刷新。
音楽、カルチャー、スポーツを融合させ、若い世代とのつながりを強めていく方針だ。
その第一弾として起用されたのが、ケンドリック・ラマー。
彼はGatorade史上初めて、単独でキャンペーンの顔を務めるアーティストとなった。
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「Is It In You?」の再起動と文化的な拡張
Gatoradeのブランド責任者アヌジ・バシン氏は、ラマーを「創造力と進化の象徴」と語る。
そしてかつての名コピー「Is It In You?」を再び呼び覚まし、次世代に希望を託している。
ラマーの内面を見つめる力と、前に進もうとする意志は、アスリートの精神と重なる。
だからこそ、この起用には意味がある。
ラマーは現在、SZAとのジョイントによる「グランド・ナショナル・ツアー」も開催中だ。
『GNX』は、Gファンクやジャズ、ロサンゼルス特有のサウンドを現代に昇華した作品として評価されている。
「Squabble Up」などの楽曲では、エレクトロや複雑なライム構成も披露。
SZA、Roddy Ricch、Kamasi Washingtonといった豪華ゲストも参加し、作品に深みを与えている。
また、かつてのドレイクとのビーフを終わらせた象徴的な作品でもあり、ラマーの成熟と挑戦が色濃く反映されている。
ケンドリック・ラマーは、失敗を抱えながら、それを糧に進んでいるということなのかもしれない。
GatoradeとのコラボCMは、そんな彼のリアルな姿勢と、ブランドが目指す新しいビジョンを明確に映し出していた。