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日本のHIPHOPシーンを独自のリアルさで貫き続ける男、般若。
流行や見せかけに流されず、自らの「生き様」を言葉に刻んできた彼は、現代社会の「飾りたがる空気」とどう向き合ってきたのか。
今回語ってくれた「飾ること」「リアルであること」への率直な思いをお届けする。
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「飾る」ことに対して、興味がなかった
ーーHIPHOPにおける「飾る」という文化について、どう考えていますか?
「正直、考えたことがないんだよね。
チェーンを着けたりするのも興味がないし、そういう見た目で強く見せることに憧れたこともない。
金属アレルギーもあるし、性格的にも何か身に着けるのが苦手なんだ。」
般若は、「飾る」ことを考えずに音楽を続けてきた。
それは流行への反発ではなく、もっと根本的に、「自分がどうありたいか」というスタンスに根ざしている。
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「オートチューン」を否定しない理由
ーー楽曲制作で「オートチューン」についてどう思いますか?
「別に全然良いと思う。俺がやらないだけで。
俺は生の声で、そのまま伝えたいタイプなんだ。
オートチューンをかけると、自分の言葉が届かなくなる気がして。」
トレンドを頭ごなしに否定するわけではない。
自分のスタイルを守る一方で、今の時代を生きるアーティストたちにもリスペクトを忘れない。
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飾ることに疲れた現代に、般若が伝えたいこと
ーー「飾る」ことに疲れてしまった人に、メッセージはありますか?
「飾んなくていいんだよ。
どう見られるかなんて気にする時間は、人生にとってマジで無駄だと思う。
もっと自分の好きなことに使ったほうがいい。」
SNSの時代、見た目やイメージばかりが先行する空気に対して、
般若はシンプルな答えをくれた。
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「リアル」であること、それがすべてじゃない
ーーHIPHOPにおける「リアル」とは?
「今は価値観が広がりすぎた。
でも、残ってる奴らにはやっぱり何かがある。
ラップが上手いだけじゃない、実体験がある。
それが聴く人に伝わるんだと思う。」
単に「リアルだから偉い」と言うのではない。
嘘を交えつつも、どこかに本当の自分が滲んでいる──そんなバランスが、般若の理想だ。
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変わり続けること、縛られないこと
ーー般若さん自身、「こうでなきゃダメ」という決めつけはありますか?
「無いね。
毎日考えも変わるし、こだわりがあるようで無い。
人生だってそうだろ?」
音楽でも、生き方でも。
縛られることなく、変化を受け入れる柔らかさが、般若の強さを支えている。
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最後に、迷うすべての人たちへ
「今、情報がありすぎて皆迷ってると思う。
でも、もっと自分を信じた方がいい。
携帯置いて、海とか山とか行ってみなよ。
その方がよっぽど大事なことに気づけるから。」
ラップという武器を手に、生きることと向き合い続ける般若。
その言葉は、ヒップホップを超えて、今を生きるすべての人に響くメッセージだった。
飾らず、偽らず。般若は今もマイクを握り続ける。
弱さも痛みも、すべてを曝け出すことで、リアルを突き刺す。
それでも、誰よりも人間くさく、誰よりも本物でいる。
それが、般若という存在だ。
あなたがもし、少しでも「本物」を求めるなら
このアルバムは、必ず胸に刺さるだろう。
その軌跡は、ここ数年のアルバムにも鮮明に刻まれている。
- 2023年『シン・おはよう日本』 └ 混沌とする時代に、般若が叩きつけた「今を生きろ」という叫び。
- 2022年『笑い死に』 └ 笑いと痛みが表裏一体であることを、リアルに描いた問題作。
- 2020年『12発』 └ ライフワークのように放たれる12のリリック。般若の「現在地」を刻んだ一枚。
- 2019年『IRON SPIRIT』 └ 肉体と精神を極限まで鍛えた“鍛錬の記録”。般若自身のタフネスが全開。
- 2018年『MAX』 └ フィーチャリングも交え、スケール感を増した挑戦的なアルバム。
- 2018年『話半分』 └ 「真実」と「嘘」の狭間をリアルに描く、般若の哲学的アプローチ。