2024年、ヒップホップ史上最も激しいラップバトルのひとつとして語り継がれることになったドレイク vs ケンドリック・ラマーの壮絶なビーフ。しかし、今回の戦いは単なる音楽的な対立にとどまらず、ヒップホップ業界の裏側、さらにはYouTuberやコンテンツクリエイターの影響力をめぐる新たな論争へと発展した。
このビーフの結果、ドレイクはユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)を提訴。その理由は「UMGが意図的に自分を敗北させるために不正な手段を講じた」という衝撃的なものだった。しかし、それだけではない。ドレイクはYouTubeのリアクター(反応系YouTuber)や音楽評論家までもが自身の評価を意図的に貶めたと主張し、音楽業界における「世論操作」の可能性を問題提起している。
では、今回のビーフがどのように展開され、YouTuberたちがどのような役割を果たしたのか? そして、ドレイクの訴えには一体どのような意図があるのか? 詳しく紐解いていこう。
ドレイク vs ケンドリック・ラマー:2024年の歴史的ビーフ
ドレイクとケンドリック・ラマーの確執は、2013年の「Control」にまで遡る。この楽曲でケンドリックはヒップホップ界の競争を煽る目的でドレイクを含む多くのラッパーの名前を挙げたが、ドレイクはこれを個人的な攻撃と受け取った。その後も、BETサイファーでの挑発やインタビューでの応酬が続き、長年にわたる火種となっていた。
しかし、この対立が決定的なものとなったのは2024年3月22日。ケンドリックがフューチャー&メトロ・ブーミンの「Like That」に参加し、ドレイクとJ・コールに直接言及したことで、状況は一変する。
歴史に残る diss の応酬
• ドレイクの反撃:「Push Ups」&「Taylor Made Freestyle」
• ケンドリックの猛攻:「Euphoria」「6:16 In LA」
• ドレイクの決定打:「Family Matters」
• ケンドリックの逆襲:「Meet The Grahams」「Not Like Us」
特に「Not Like Us」は2025年のグラミー賞で5冠を達成し、事実上の決着をつけた。世間の評価も「ケンドリックの圧勝」という見方が強まり、ドレイクにとってはキャリア史上最大の敗北となった。
ドレイクのUMG提訴:敗北の原因は「世論操作」?
2024年5月6日、ドレイクの敗北が決定的になると、彼は驚くべき行動に出る。それがUMGを相手取った訴訟だ。ドレイクの主張は以下のようなものだった。
1. UMGが「ボット」や「ペイオラ(買収)」を利用して世論を操作
2. YouTubeリアクターや音楽評論家が買収され、意図的に「Not Like Us」を評価
3. UMGがリアクション動画を収益化し、特定の曲の評価を意図的にコントロール
この主張が事実であれば、音楽業界の「デジタル・マーケティングの闇」とも言える。しかし、YouTuberたちはこの訴えに対して一斉に反論した。
YouTubeリアクターの影響力とそのリアクション
YouTubeのリアクション動画文化は、ヒップホップファンにとって重要な情報源だ。アーティストの楽曲がリリースされるたび、数百人のリアクターがその場で反応を撮影し、楽曲の評価がリアルタイムで形成されていく。
特に、影響力のあるリアクターとして知られるのは以下の人物たちだ。
• JayBlac
• Big Quint
• No Life Shaq
• Scru Face Jean
• Zias & B Lou
彼らは公平な視点でリアクションを行うことを売りにしており、ファンとの信頼関係を大切にしている。しかし、ドレイクの訴えでは、彼らがUMGの指示を受け、「ケンドリックの楽曲を絶賛するよう誘導された」とされている。
しかし、実際にリアクターたちと話をすると、ドレイクの主張は事実とは異なることが明らかになった。
リアクターの反論:「金で意見は変えない」
YouTuberたちは、以下のような反論を展開している。
• 「私たちはお金で意見を変えない」
• 「どんな曲であれ、良いものは良いと評価する」
• 「視聴者との信頼関係が最も重要」
彼らにとって、金銭のやり取りで意見を歪めることはYouTuberとしての死を意味する。ファンは正直なリアクションを求めており、それを裏切ればチャンネルの信頼を失うからだ。
また、「Not Like Us」はそもそも音楽的にも大衆に受け入れられる要素が多かったため、肯定的なリアクションが多かったのも自然な流れだった。
ドレイクの訴訟が意味するもの
今回のドレイクの提訴は、単なる敗北の言い訳ではなく、音楽業界における「デジタル世論操作」の存在を示唆するものとも取れる。
• 音楽の評価は「マーケティング」なのか?
• YouTubeリアクターの影響力はどこまで許されるのか?
• アーティストはどこまで自分の評価をコントロールできるのか?
これらの問題は、今後の音楽業界にとって避けて通れない議論となるだろう。ヒップホップの歴史を変えた2024年のビーフは、音楽そのものの在り方をも変える可能性を秘めている。
ドレイクは果たしてこの訴訟で逆転できるのか、それとも時代の変化を受け入れるしかないのか——。 VIA