水曜日, 4月 2, 2025
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Rakim、57歳の誕生日:いつ聴いても耳が喜ぶ♪神MCについて

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1968 年1月28日に生まれたWilliam Griffith Jr(ウィリアム・グリフィス・ジュニア)。またの名をRakim Allah(ラキム・アッラー)。今現在進行形で「偉大」とされているラッパー達も皆、自分以上に「偉大」と声を揃えて認める、マイクを持たせたら比類無き史上最大のMCだ。DJ Eric B.(DJエリックB.)と彼の画期的なデビューアルバム『Paid In Full』は、ヒップホップの歴史の礎であり創造的な傑作であると同時に、意欲的なMCやDJにとって不可欠な指導的ガイドとしても未だに研究されている。ラキムの革新的なMCスタイルと比類のない叙情性は、ヒップホップの芸術性のゴールドスタンダードを確立した。彼が「言葉の魔術師」「神」として知られているのには十分な理由があるのだ。にもかかわらず、この「神」のプライベートやバックグラウンドは、他の爪痕…いや、偉業を残そうと必死なOG達に比べると、慎ましやかで謎に包まれている。今日は彼の生誕57周年を記念して、その偉業と経歴をさらりと振り返ろうと思う。ヒップホップ歴〇十年のOGファンも、最近聴き始めたビギナーファンもみんなチェキ!

Eric B. & Rakim時代からソロまで

Eric B. & Rakim(エリック B.&ラキム)というデュオの片割れとして初めて有名になったとき、彼はまだ10代だった。彼らの1987年のデビューアルバム『Paid in Full』は主にラキムの叙情性へのアプローチのおかげで、ヒップホップの黄金時代の転換点としてよく引用される。彼は、独特のストイックなフローと複雑でポエティックに意味を込めた多音節の押韻構造(multi-syllabic rhyming structure)の使用により、このジャンルを新たな高みに引き上げた。彼の押韻スタイルの密度の濃さ(構造的にも比喩的にも)の一例は、エリック B. & ラキムのセカンドアルバム『Follow the Leader』のタイトルトラックである。字幕で読むと特に分かるが、めちゃめちゃ韻を踏んでいる。是非聴いてみよう!

彼は当時を振り返り、こう語っている。「俺は17歳だった…とても若かったし、ヒップホップにどんなアプローチしたいのかを理解したり、自分がどんな風に楽しみたいのか人々に伝えるのに時間がかかったよ」

最終的にラキムはエリック・B.と4枚のアルバムをリリース後、1992年にビジネス上の意見の相違が原因でパートナーシップを解消した。短い活動休止期間を経て、1997年にソロ活動を開始し『The 18th Letter』、『The Master』、『The Seventh Seal』という3枚のアルバムを制作した。ちなみに筆者はコンビ時代よりソロ後の彼のアルバムをよく聴いていて、特に『The 18th Letter』の中の『Guess Who’s Back』という曲が好きで、今もたまに聴いている。MVは今観ると設定や特撮が少し陳腐なのだが、ラップはピカ一なのでこの記事に添付をしておく。

叔母や家族の影響と言葉との向き合い方

New York(ニューヨーク)のLong Island(ロングアイランド)で生まれ育ったラキムのずば抜けた音楽的スキルとセンスは、血筋なのかもしれない。彼の母Cynthia(シンシア)はジャズとオペラ歌手であった。彼の兄Steve(スティーブ)はピアニストである。そして、彼の叔母はR&Bの女王と呼ばれた歌手、兼女優のRuth Brown(ルース・ブラウン)であった。グラミー賞受賞歌手のルース・ブラウンは1950年代、R&BにPOPの要素を取り入れて有名になった。その叔母が、業界でのマナーや行動を甥っ子のラキムに教えた。また音楽が大好きで、自身も「ミス・リズム」のニックネームがあった彼女は、彼のライミングスキルを分析して、アーティストとしてタイムコードを教えてくれたそうだ。

高校時代は社会学や科学のクラスを好んでいたが、授業をサボっていた時英語教師にラップしていることを指摘され、ラッパーになるなら英語に力を入れるべきだと心を入れ替えたという。それ以来、彼は言葉についてそれらがどのように構築され、どう適切に使用するかを考えるようになったという。語彙に興味を持ち、読書感想文の書き方を学んだ。読書感想文には、韻を踏むために必要なすべての要素が含まれていた。「俺は作家のように考える方法を学んだんだ。つまり、フレーズや標識などを見るたびに、目立つ重要な単語を一日中覚えておくって方法さ。常にさまざまな韻のスキームを吸収して、理解しようとしていた。バースにまとめるときに余白の横にメモを書く。そうすれば脇道にそれることなく、その瞬間に書いていることに集中できるんだ」「レコーディングの時は、あらかじめ韻を踏んでおく。そして音楽に合わせて言葉を書き加えていくんだ。時々、音楽が何を書くべきかを教えてくれる。音楽に感情があると、特にサンプルが俺を魅了した時、それは俺にビジョンを与え、頭が回転し始める。すると、さまざまなリズムで考えが浮かんでくる。その境地に入ったとき、すべてのフレーズや情報が入ってくると、それを止めるのは困難になるんだ。コンセプトがすぐに聞こえ、言葉が流れていく。言葉のリズムの違いにも注目している。だからこそ、後で見返せるように補足を書いているんだ。それはかなりオーガニックなプロセスだと思う」

追記だが、ご推測の通り1980年代半ば彼はファイブ・パーセント・ネイションに改宗し、自身のイスラム教の信念を反映するためにラキム・アッラーという名前を採用した。

後世のラッパーと今のヒップホップに対して

ラキムは後世のラッパーたちとの関係についてこう語っている。2Pacがラキムのラップスタイルに影響されたことは有名だが、実は彼は2Pacから突然の電話を受けたことがあると述べ、「俺は奴が何を支持し、何をしようとしているのか知っていたさ」と回想した。その上で、彼は2Pacに対して、尊敬しか抱いていなかったと述べている。

2018年のインタビューで彼はラップの衰退を悲劇的だと嘆いていた。「ポエトリーと滑らかさは死に、メッセージ性もなく、言葉や詩を通して意味ある変化を生み出すこともできない上、(昨今のラッパーは)この芸術を傷つけているのに気づいていない」

だがMCの神は、Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とDrake(ドレーク)のビーフについては、「(ヒップホップという)ジャンルにとても必要なことだった」と述べたうえで、この確執が若いアーティストたちが主流(メインストリーム)と本物(リアル)のヒップホップの違いを理解するのに役立ったと信じているとも打ち明けていた。そして、ケンドリック・ラマ―については、「ケンドリックはいい奴だ。若くありながらも、リリシストが好むいくつかの特徴をまだ持っているってとこを、俺は尊敬してる」と彼のファンであることを認めていた。

Writerとしてやりたかったこと、これから

昨年7月に15年ぶりに新アルバム『God’s Network: Reb7rth』をリリースしたレジェンド。今現在ヒップホップが最大の音楽ジャンルになったと述べたうえで、彼はインタビューでこう語っていた「俺が”作家”としてやりたかった主なことは、人々とつながることだ。何年も経って、それができるようになった気がするよ」

そんなつながりを具現化したがごとく、彼が画期的な金融テクノロジーとAIを活用したプラットフォームであるNotesを使って、未知のベンチャーに着手したとのニュースが流れた。音楽、お金、知識を融合させて、独立したアーバンミュージックのアーティストやクリエイターが直面する独自の課題に対処する。資本へのアクセスを再定義し、重要な金融リテラシー、起業家としての洞察、音楽ビジネス教育を提供するとのこと。今年は彼の起業家としての顔も見れそうだ。

筆者は彼が自身をMCでもラッパーでもなく「Writer(作家)」と呼んでいたことが 、とても印象的だった。この記事を書くにあたって、彼のインタビューを幾つも読んだり視聴したのだが、やはり彼はその名声や周囲からの賞賛や尊敬を得て矜持を持ちつつも「謙虚」という言葉がとても似あうように思う。この「MCの神」の「言葉」との向き合い方は、まるでモノづくりにおける「職人」そのものである。ラップを生業としている読者は共感できる個所があるかもしれない。もしくはこの記事を読んでヒントとなる何かがあるかもしれない。いずれにせよ、彼の誕生日にちなんで言葉の魔術師が紡ぐ「神MCスキル」を聴いてみよう。きっと耳が喜ぶぞ!

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