ドレイク (Drake)、本名オーブリー・ドレイク・グレアム (Aubrey Drake Graham) は、カナダ出身のラッパー、シンガー、ソングライター、そして俳優として、音楽業界においてその商業的成功を確立したアーティストです。彼のキャリアは、単なる音楽だけに留まらず、文化やビジネスの面でも多大な影響を与えています。この記事では、彼の驚異的な商業的成功の背後にある要素や、ケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar) とのビーフ、XXXTentacionとの関係、さらにゴーストライターの問題に至るまで、すべての重要なポイントを掘り下げていきます。
ドレイクの商業的成功:ユニークなスタイルと音楽の進化
ドレイクが最初に大きな注目を浴びたのは、カナダのテレビドラマ「デグラッシ (Degrassi)」で俳優としてキャリアをスタートさせた時でしたが、2009年にリリースされたミックステープ『So Far Gone』でラッパーとしての才能が広く知られるようになりました。このミックステープに収録されたシングル「Best I Ever Had」は、彼を一躍スターダムに押し上げ、アメリカのヒップホップシーンでその地位を確立しました。
彼の成功の大きな要因は、感情的で繊細な歌詞と、メロディアスなラップスタイルにあります。ラップとR&Bを融合させたスタイルで、彼は特に女性リスナーからの支持を集め、これが大衆的な人気の一因となりました。また、ヒップホップの伝統的なマチズモに反し、自身の感情や弱さを率直に表現することで、従来のヒップホップファンだけでなく、幅広い層にアピールしました。アルバム『Take Care』や『Nothing Was the Same』は、彼の音楽スタイルの進化を象徴するものであり、今日のヒップホップにおけるメロディックな要素の強化に大きく貢献しました。
さらに、ドレイクは常に流行を先取りする存在であり、トラップミュージックからアフロビーツ、ダンスホールに至るまで、さまざまなジャンルを取り入れることで、グローバルなファンベースを築いています。彼の商業的成功は、ストリーミング時代においても揺るぎないものであり、SpotifyやApple Musicなどでの再生回数が常にトップクラスに位置しています。
ケンドリック・ラマーとのビーフ:リリックを巡る対立
ドレイクとケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar) とのビーフは、ヒップホップファンの間で長く語り継がれているテーマです。この対立は、ケンドリックが2013年に参加したビッグ・ショーン (Big Sean) の楽曲「Control」でのヴァースが発端でした。ケンドリックはこの曲で、多くの著名ラッパーの名前を挙げて彼らを「挑発」しましたが、その中にドレイクの名前も含まれていました。
ケンドリックの挑発に対し、ドレイクはあからさまな反応を見せなかったものの、その後の楽曲で暗にケンドリックに対する不満を表現しているとファンや評論家は解釈しています。
それ以来、二人の間には微妙な緊張が漂い続けています。
そんな中突如ケンドリックがFutureの楽曲「Like That」の中でdrakeをディスするという出来事が起こります。これが2度目の大きなビーフの事の発端です。以下から和訳を視聴することができます。
それに対してdrakeは「push ups」などの楽曲で反撃を開始します。以下から和訳動画を視聴することができます。
一方でケンドリックは、自分のリリックやメッセージ性がより「リアル」であり、ドレイクのようなポップなメロディックラップとは異なるという姿勢を取っています。
さらにdrakeを追い込む形となった「Not Like Us」では、ケンドリックがこの対立を再び浮き彫りにし、ドレイクとは根本的に異なることを強調しています。ケンドリックは、ヒップホップの「リアルさ」や「真実」を重視するラップカルチャーの価値観に忠実であり、ドレイクが持つメインストリームへのアプローチを批判しています。「not like us」の和訳動画は以下から視聴することができます
ケンドリックのメッセージ
「Not Like Us」の中で、ケンドリックは自分がドレイクとは異なる存在であることをリリックで強く主張しています。この曲を通じて、彼はラッパーとしての自己のアイデンティティを明確にし、商業的成功やポップなスタイルに迎合することなく、自分の信念を貫く姿勢をアピールしています。
ケンドリックのメッセージは明白です。「ドレイクのようなメインストリームのラッパーたちとは、俺は違う。」彼はヒップホップの本質的な部分、つまりリリックの奥深さやメッセージ性を重視し、ドレイクのように大衆に受け入れられるために自己のスタイルを変えることはしないという強い信念を持っています。
ケンドリックとドレイクのビーフは、ヒップホップにおける「リアルさ」と「商業的成功」という二つの相反する価値観の衝突を象徴しており、彼らの対立は業界全体にとっても重要な議論のテーマとなっています。
XXXTentacionの裁判とドレイクへの影響
さらに、ドレイクは故ラッパーXXXTentacionとの間でも議論の的となる瞬間がありました。XXXTentacionは、彼の楽曲「Look At Me!」のリリース後、ドレイクが彼のスタイルを盗んだと非難し、これが二人の間に緊張を生みました。XXXTentacionは、この問題を公にし続け、彼のファンの間でもドレイクに対する反感が強まりました。
XXXTentacionが2018年に銃撃されて死亡した後、その事件にドレイクの関与を疑うファンが一部で出現しました。これに対し、ドレイク側は明確に否定していますが、XXXTentacionの殺害に関する裁判でドレイクの名前が言及されたことで、この噂はさらに広まりました。結局、ドレイクが事件に直接関与した証拠は見つかっておらず、この話題は現在も憶測の域を出ていませんが、ドレイクのキャリアにおいては一つの影を落とす出来事となっています。
ゴーストライター論争:ヒップホップの純粋性に挑む
ドレイクのキャリアで避けて通れない話題の一つが、ゴーストライターを使用しているという指摘です。この論争は、ラッパーのミーク・ミル (Meek Mill) が2015年にドレイクがゴーストライターを使っていると公に非難したことで大きな波紋を呼びました。ミーク・ミルは、ドレイクの「R.I.C.O.」でクエンティン・ミラー (Quentin Miller) というライターが彼の歌詞を代わりに書いていたと主張。この暴露は、ヒップホップの伝統的な「リアルさ」や「純粋性」を重んじる文化の中で、大きな論争を巻き起こしました。
ドレイクはこの論争に対し、ミックステープ『If You’re Reading This It’s Too Late』を通じて間接的に応じ、ヒット曲「Back to Back」でミーク・ミルを皮肉り、結果としてミーク・ミルとのビーフはドレイクが圧倒的に優位に立つ形で幕を下ろしました。ゴーストライター問題はその後も彼のキャリアに影響を与え続けていますが、ドレイクの商業的成功や才能への評価を覆すことには至っていません。
ドレイクの遺産と未来
ドレイクのキャリアは、数々の成功や論争を通じて形成されてきました。音楽的には、ジャンルを越えたユニークなスタイルとメロディアスなラップで時代を象徴し、また商業的には常にトップチャートを独占する存在となっています。しかし、その裏にはゴーストライターの問題やライバルとの衝突、さらにはXXXTentacionの事件など、暗い影も存在します。
それでも、彼の音楽が時代のトレンドをリードし続けたこと。彼の圧倒的なビジネスセンスが賞賛されている事実に変わりはありません。ドレイクとはヒップホップ界だけでなく、エンターテインメント業界全体でもその地位を確立しており、今後もその存在感をさらに強化していくのか、それともケンドリックとの一件で失速する事になるのか、世界中が注目しています。
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