『5AM』は、夜明け前の静寂と緊張感を閉じ込めたようなヒップホップトラックだ。ダークなビートと研ぎ澄まされたフロウが、この新曲の核心を形成している。
『5AM』のビートは、重厚なキックと深く沈み込むベースラインが土台を築いている。上ネタには幾何学的なシンセサイザーが絡み、まるで都市の明滅するネオンを音像化したかのような質感を持つ。このラッパーの声質は低音域に芯があり、一音一音が空間を切り裂くように配置されている。フロウは緩急をつけながらも一定のグルーヴを保ち、聴き手を5時の静寂へと引き込んでいく印象だ。
リリックの世界観は、具体的な言葉を断定することは避けるが、夜の終わりと昼の始まりという境界線上の心象風景を描いているように感じさせる。ライミングは過度に技巧的ではなく、むしろ言葉の重みを優先したスタイルで、メッセージ性を前面に押し出す構成となっている。この新曲が持つ内省的なムードは、ヒップホップというジャンルの持つ多様性を改めて実感させてくれる要素だ。
リスニングシーンとしては、深夜のドライブや早朝のワークアウト前のルーティンに最適だろう。車窓に流れる街灯や、まだ人影のない道路の風景が、この楽曲のハードな質感と呼応する。あるいはヘッドホンで没入しながら、一日の始まりに向けて集中力を高めたいときにも機能する一曲といえる。
編集部としては、『5AM』というタイトルが示す時間帯の持つ象徴性を、音とフロウで見事に体現していると感じた。このラッパーは、派手さではなく静かな強度で勝負する新たな一面を提示している。ヒップホップシーンにおいて、こうした内向的なエネルギーを持つ作品が持つ価値は、今後さらに評価されていくだろう。
※本記事はSpotifyで公開されている楽曲情報をもとに、HIPHOPCs編集部が独自の視点でレビューしたものです。楽曲の解釈は筆者の印象に基づいており、アーティストの公式見解ではありません。
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