日曜日, 11月 30, 2025

【2026年グラミー賞 】ケンドリック・ラマー、Clipse、Tylerの快進撃と「ヒップホップはオワコンか?」

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via @kendricklanar @ladygaga IG

はじめに──「ヒップホップはオワコン」という言葉が生まれた理由

ここ最近SNSや一部のメディアで「ヒップホップはオワコンになった」という言葉が頻繁に語られるようになりました。この言葉が生まれた背景には、音楽業界の構造的な変化が大きく関わっているのではと。

まず最も象徴的だったのが、ビルボードHot100からラップ曲が消えていった現象です。ポップやAfrobeats、ラテン音楽、K-POPがチャートの最上位を独占するようになりました。この頃、ヒップホップ界ではストリーミング主導のアルゴリズムが変化し、TikTok中心の「一瞬バズって消える曲」構造が強まっていきました。サムネ映えを重視したショート動画向けの曲が増加することで、チャートの”顔つき”が大きく変わったのです。

さらに、リスナーの嗜好も変化していきました。ラップの強みである「自己主張」「アグレッション」「バイブス」よりも、「メロディ」「感情」「映画的スケール」を求める層が増えていったのです。結果として、Billie EilishやSZA、Rosé、Bad Bunnyのように、ジャンルを越えた物語性のある曲が主流を占めることになりました。

そしてもう一つ見逃せないのが、ラップの供給過多と同質化の問題です。Spotifyの統計でも2020年代後半はラップの新曲数が過去最高に増加しており、似たような808に似たようなフロウの曲が溢れることで、ラップの魅力が埋もれやすくなっていました。これが「オワコン説」が生まれる構造的な背景だったのです。


しかし2026年──グラミーは完全にヒップホップが主役に戻った?

2026年のグラミーのノミネーションを見ると、この3年続いた「ヒップホップ衰退論」が大きく揺らいでいることがわかります。むしろ、ヒップホップは再び音楽業界の中心に返り咲いたと言えるでしょう。

最も注目すべきは、ケンドリック・ラマーがAlbum of the Year、Song of the Year、Record of the Yearという「ビッグ3」すべてにノミネートされたことです。このコンプトン出身のスーパースターは、前回のグラミーでDrakeへのディス曲「Not Like Us」でSong of the YearとRecord of the Yearを獲得したばかりですが、今回は新作「GNX」と楽曲「Luther」(SZAとのコラボ)でさらなる躍進を遂げています。


Album of the Yearを見ると、ケンドリックの「GNX」はBad Bunnyの「Debí Tirar Más Fotos」、Justin Bieberの「Swag」、Sabrina Carpenterの「Man’s Best Friend」、Lady Gagaの「Mayhem」、Leon Thomasの「Mutt」といった強豪と並んでいます。

しかし特筆すべきは、Clipseの「Let God Sort Em Out」とTyler, The Creatorの「Chromakopia」という、ヒップホップの芸術性を象徴する2作品が同時にノミネートされていることです。これは、グラミーがヒップホップを単なる商業音楽ではなく、文化的・芸術的価値を持つものとして評価していることの証明です。
Song of the Yearでは、ケンドリックの「Luther」(SZAとのフィーチャリング)がノミネートされています。ここでも注目すべきは、Doechiiの「Anxiety」が、

Lady Gagaの「Abracadabra」、RoséとBruno Marsの「APT.」、

Bad Bunnyの「DtMF」、Sabrina Carpenterの「Manchild」、

Billie Eilishの「Wildflower」といった世界的なポップスターたちと肩を並べていることです。Doechiiはまだ新世代のラッパーですが、リズムと叫びと内面告白という新しい構造のラップで、音楽業界全体から認められたのです。
Record of the Yearでも、ケンドリックの「Luther」とDoechiiの「Anxiety」がノミネートされており、ヒップホップが2026年のグラミーで圧倒的な存在感を示していることがわかります。

ビルボード構造は「ジャンル優遇ではなく反応速度」だった?

2024年以降のBillboard Hot 100は、ジャンルよりも「リスナーが反応する速さ」が最重要のスコアになっています。TikTokからSpotify、YouTubeへの反応速度がアルゴリズム上で極めて重要視され、最初の72時間での再生速度がチャートへの影響を大きく左右するようになりました。

また、Spotifyの編集プレイリスト、特にNew Music Fridayの影響力が上昇したことも見逃せません。ラップはここで選ばれにくい傾向が続いたため、一時的にチャートから後退していったのではないかと。さらに、TikTokでバズって3週間で消えるという短命ヒットが増えたことで、構造的にラップの育ち方と合わなくなっていたのも関係ありそうです。


2026年はヒップホップが復活したのか?

まず、ケンドリックが「文化×SNS×音楽性」をすべて制圧したこと。「Not Like Us」から「GNX」への流れは、ヒップホップがショート動画時代の中で再び巨大な文化力を持ち得ることを示しました。

次に、TylerとClipseが「アートとしてのHipHop」を評価させたことも重要です。グラミーは芸術としての価値を重視します。Tylerは色彩理論と現代音楽的な構成を、Clipseはストリートの哲学と地域性の深化を、ケンドリックは物語性と社会性の統合を示しました。これにより、グラミーは商業チャートとは別物であるという認識が再び強まったと。

そして最後に、ビルボードの反応速度モデルに「ラップ的必然性」が戻ったことも。2025年から2026年にかけて、ミームで消費される曲が減少し、ロングヒットが復活し、アルバム中心の聴かれ方が回帰しました。これによって、ラップの魅力である長期的な物語に再び光が当たり、ビルボードでも徐々に上位が増え始めたのではないかと。


結論:2026年はヒップホップの再黄金期の入口説

2026年のグラミー賞は、ラップが文化・芸術・商業のすべてで評価される構造が戻ってきた年と断言できます。そして、ケンドリック、Tyler、Clipse、Doechiiを中心に、2020年代後半のヒップホップは深化のフェーズへ突入しています。オワコンどころか、これは再黄金期の入口になるのかも。。と願いたいです


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