ヒップホップの女王、Mary J. Blige(メアリー・J・ブライジ)が1992年にリリースした、不朽の名曲『Real Love』がニュースとなっていて筆者のアンテナに引っかかった。サンプリングが訴訟問題に発展することは度々あるが、今回は是非耳の肥えたHiphopCs民の意見をうかがいたい。
ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)は今週、メアリー・J・ブライジの1992年の名曲に関する著作権侵害訴訟を連邦裁判所が棄却したことで、大きな法的勝利を収めた。2024年にUMGを相手取って提起されたこの訴訟には、ブライジ本人の名前は記載されていないものの、Tuff City Recordsは、『Real Love』が、ヒップホップ史上最もサンプリングされた曲の一つであるHoney Drippers(ハニー・ドリッパーズ)のファンク・アンセム、1973年の『Impeach the President』のドラムパートを著作権使用許諾を得ずに使用していると主張していた。
9月23日、米国地方裁判所のDale Ho(デール・ホー)判事は、ブライジのブレイクアウト・ヒット曲は、訴訟の中心となっているハニー・ドリッパーズの1973年の曲と『Real Love』は「実質的に類似していない」との判決を下した。ホー判事は、「両曲は同じに聞こえない。一般のリスナーは『Real Love』が『Impeach the President』から盗用されたとは気づかないだろう」と指摘したのだ。
余談だが、判事というとヒップホップに疎そうな老齢な方を想像するが、このデール・ホー判事はバイデン前大統領から司法官として任命された、1977年生まれでフィリピン系移民の、比較的若く新進気鋭の判事だ。今現在、ニューヨーク南部地区の米国地方判事を務めている。彼は『Real Love』をリアルタイムで聴いていただろう世代だ。
ブルースやジャズから、ファンクやヒップホップまで幅広いジャンルにわたり数万件の著作権を所有していると主張するレーベルTuff City Recordsは、長年にわたりメジャーアーティストやレーベルに対して同様の訴訟を起こしてきた。過去の訴訟には、Beastie Boys(ビースティ・ボーイズ)、Jay-Z(ジェイ・Z)、Kanye West(カニエ・ウェイスト)、などが関与しており、そのほとんどが裁判前に棄却、または和解している。
皮肉なことに、本訴訟の焦点となった『Impeach the President』自体は、ヒップホップの名曲の数々、例えばNas(ナズ)の『I Can』や、J. Cole(J.コール)の『Wet Dreamz』、さらにはAudio Two(オーディオ・ツー)の『Top Billin』といった曲の大きなサンプルの基盤となっているという。
早速『Real Love』と『Impeach the President』(ついでに『I can』と『Wet Dreamz』も)をこちらに添付した。元々サンプリング情報に疎い一般リスナーな上、耳も目も記憶力も、なんなら感性も年々衰えている筆者には、ドラムパートもその他もちっとも『Real Love』と同じに聴こえない。いや、ホー判事の言う通りなのか?ということで、ヒップホップ好きの耳の肥えたHiphopCs民よ!是非聴き比べて教えてくれ!