VIA @cardi b IG
先日Sei記者が取り上げた記事7年ぶりの新作『Am I The Drama?』で、カーディ・Bがヒップホップシーンに爆弾を投下。BIAへの直接攻撃から、Ice Spice、JT & Lil Uzi Vertへの巧妙なジャブまで、その過激なリリックの全貌と、ヒップホップカルチャーにおける「ディス」の意味を深掘り
世界的なスーパースター、Cardi B（カーディ・B）が、待望のセカンドアルバム『Am I The Drama?』をリリースしました。2018年の歴史的デビュー作『Invasion of Privacy』から実に7年ぶりとなる本作は、豪華ゲストが参加した23曲入りの大作です。
しかし、今最もシーンの話題をさらっているのは、その豪華な客演陣ではありません。Cardi B自身が、複数のラッパーに向けて放った痛烈な「ディス」の数々です。
最も過激な標的はBIA。「曲を5つ言えたらたいしたもんね」
アルバムの中で最も直接的かつ強烈な攻撃の対象となったのは、以前から楽曲の盗用疑惑などを巡って対立してきたラッパー、BIAです。収録曲「Pretty & Petty」の冒頭から、Cardi Bは一切の容赦なくこうラップします。
“Name five BIA songs, gun pointed to your head / Bow! I’m dead.”
（「BIAの曲を5つ挙げてみてよ、頭に銃を突きつけられても無理でしょ？ バン！ほら、私でも死んじゃうわ」）
これは「あなたの曲なんて誰も知らない」という、ラッパーにとってこの上ない侮辱です。攻撃はさらに続き、
• 「下痢BIA（Diarrhea BIA）、息が臭すぎて姿が見える前から匂ってくる」
• 「あんたはほぼ失業者。ギャラが高いCoi Lerayを呼べない時だけ仕事が来るんでしょ」など、キャリアそのものを揶揄する辛辣な言葉でBIAを徹底的に攻撃しています。
JT & Lil Uzi Vertカップルへの巧妙なジャブ
次に矛先が向けられたのは、City GirlsのJTと、そのパートナーであるLil Uzi Vertです。楽曲「Magnet」では、名指しは避けつつも、明らかに二人を標的にしたと思われるリリックが展開されます。
“Now let’s talk about this hating-ass bitch, ungrateful-ass bitch…”
（「じゃあ、この嫉妬深くて恩知らずな女の話でもしようか…」）
この一節に続き、
• 「男に必死に媚び売ってるのに、全然フィーチャリングしてもらえない女」
• 「彼女がイラついてるのは、バッグを共有するような男（※）と付き合ってるからでしょ」
◦ （※Lil Uzi Vertが女性ものの高級バッグを愛用することを揶揄）
• 「私の男も浮気はするけど、さすがに彼のお尻にディルドを突っ込んだりはしないわ」と、二人の関係性を皮肉るような、巧妙かつ侮辱的なジャブを繰り出しています。
新世代のスター、Ice Spiceへのアンサーか？
さらに、ニューヨークの新世代を代表するラッパー、Ice Spiceへの言及も見逃せません。
「のろまな顔の女、あんたは誰のイスを奪うつもり？ 私の場所は永遠よ、ダルメシアンみたいにね」
これは、Ice Spiceが自身のヒット曲で「私があいつの場所を奪った」とラップしたことへのアンサー（返答）だと解釈されています。「ダルメシアン」という言葉は、斑点模様（spot）と自分の立ち位置（spot）をかけた、Cardi Bらしい言葉遊びです。
なぜCardi Bはディスをするのか？ヒップホップにおける「王座」の証明
デビュー作でグラミー賞を獲得し、ポップアイコンとしての地位を確立したCardi B。今回のアルバムは、単なるヒット作ではなく、ヒップホップシーンにおける自らの「王座」を改めて誇示し、挑戦者を牽制するための“ステートメント・アルバム”と言えるでしょう。
ヒップホップにおいて「ディス」や「ビーフ（論争）」は、単なる悪口ではなく、スキルを競い合い、シーンを活性化させる一部ですよね。Cardi Bの今回の強烈なリリックは、激化する女性ラッパー同士の競争と、SNS時代の新たなパワーゲームを象徴する出来事として、今後も大きな議論を呼ぶことになりそうです。
『Am I The Drama?』で何が起きたか
• 7年ぶりの新作で、Cardi Bが複数のラッパーを痛烈にディス。
• BIAには「曲を知らない」とキャリアを根本から否定する最も過激な攻撃。
• JT & Lil Uzi Vertには、二人の関係性を揶揄する巧妙なジャブ。
• Ice Spiceには、ヒット曲のリリックを引用する形でアンサー。
• 本作は、Cardi Bがヒップホップシーンの頂点に君臨し続けることを宣言する、極めて戦略的なアルバムとなっている。