月曜日, 9月 22, 2025

【速報】Cardi B、7年ぶりの新アルバム『Am I the Drama?』を早速レビューしたよ!

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7年前、センセーショナルなデビューアルバム『Invasion of Privacy』をリリースした、Cardi B(カーディB)が、待望の新アルバム『Am I the Drama?』を引っ提げてラップゲームに戻ってきた。リリース後24時間経っていないのにもかかわらず、全米レコード協会(RIAA)がTwitterでプラチナ認定をしたと発表したように、このLPはすでに米国でアルバム換算で100万枚以上を売り上げている。すごい快挙だ。

現在ヒップホップ界の頂点にいる女性ラッパー

今、世界のヒップホップ界の頂点にいる女性ラッパーは、紛れもなくこの貴女だろう。最優秀ラップアルバムのグラミー賞を受賞した唯一の女性ソロアーティストなのに、Offset(オフセット)とソープドラマのような離婚劇場を繰り広げ、つい先日彼氏でフットボール花形プレーヤーのStefon Diggs(ステフォン・ディッグス)との子供を身籠った(彼女にとって4人目の子)と発表し、世間を驚かせていた。だが、カーディは妊娠中にも拘らず来年2月から4月まではツアーを催行するという。

揺るぎない自信と鋭いウィットを持ち、自身の信念を貫く美しき女戦士のようなカーディB。彼女の性格が、そのラップスタイルにも反映している。高いエネルギーと率直なリリックス。彼女のフロウは鋭くリズミカルな上、時にはビートの中で声を楽器のように使い分け、キャッチーで力強い。そして彼女が「私みたいなB____!」と発すると、ネガティブなはずの「Bワード(日本語訳は女狐)」が、いとも容易く「強い、独立した、自信のある、力強い女性像=私」という称賛に文脈が昇華されてしまうし、また「モノホンのB___sに敬礼!」と発すれば、裏表のあるフェイクな女性に対する皮肉にもなるのだ。

Am I The Drama?

『Am I the Drama?』とは直訳すると「私はドラマなの?」だが、「私って大げさすぎ?」「ドラマチックすぎ?」「悲劇のヒロインぶってる?」等々を意味する。元々は、ドラァグ・クイーンのScarlet Envy(スカーレット・エンヴィ)が、米国ドラァグ界の大御所Ru Paul(ル・ポール)の番組で発した言葉であり、それをカーディが自身の私生活にリフレクトさせ、アルバムタイトルとして採用したそうだ。これまでの「ナイス」なパソナから「より大胆で、フィルターを通さない自分」への転換を象徴しているという。彼女は「悪役」の役割を受け入れ、謙虚な姿勢を捨て、人生とキャリアを取り巻くドラマに立ち向かうことを決意したらしい。

フィーチャリングのアーティスト達

全てを視聴すると、のべ70分にも及ぶこの超力作。その中には、Megan Thee Stallion(メーガン・ザ・スタリオン)とコラボった2020年の『WAP』と、と2021年のヒット作『Up』がメインとして収録されている。このアルバムを通し、彼女は自分を嫌っているヘイター達、愛、別れ、そしてトップの座に居続けるストレスについて言及している。23曲収録のアルバムには、Selena Gomez(セレーナ・ゴメス)、Tyla(タイラ)、Summer Walker(サマー・ウォーカー)、Lizzo(リゾ)、Janet Jackson(ジャネット・ジャクソン)といった女性アーティスト達も参加している。

トラックリスト

トラックリストは以下の通りだ。

1. Dead (feat. Summer Walker)

2. Hello

3. Magnet

4. Pick It Up (feat. Selena Gomez)

5. Imaginary Playerz

6. Bodega Baddie

7. Salute

8. Safe (feat. Kehlani)

9. Man Of Your Word

10. What’s Goin On (feat. Lizzo)

11. Shower Tears (feat. Summer Walker)

12. Outside

13. Pretty & Petty

14. Better Than You (feat. Cash Cobain)

15. On My Back (feat. Lourdiz)

16. Errtime

17. Check Please

18. Principal (feat. Janet Jackson)

19. Trophies

20. Nice Guy (feat. Tyla)

21. Killin You H*es

22. Up

23. WAP (feat. Megan Thee Stallion)

本アルバムの特色

男性ラッパーと同じように女性や男性を貶めることなく女性の喜びについて触れているものの、世間からは「下品」「卑猥」と非難された『WAP』では、同じく女性戦士的存在のメーガンと、音楽業界のダブルスタンダードに立ち向かっている。南部のアップビートが特徴的な『Up』でのポンポンと繰り出す速射砲のようなフロウは、シンプルなビートに驚くほどよく合って頼もしく、そのリリックスも秀逸だ。筆者のお気に入りのトラック『Bodega Baddie』でも、驚異的なスピードのサルサに乗って、彼女の散弾銃のようなラップが楽しめる。『What’s Goin On』では、4 Non Blondes(4ノン・ブロンズ)の90年代の大ヒット曲『What’s Up?』のコーラスをリゾが力強く歌い上げ、カーディとラッパーのオフセットの結婚生活が、いかに破綻したかについて語っている。

そして、筆者が期待に胸を膨らませ待っていた、ジャネット・ジャクソンをフィーチャーした『Principal』。なかなかラッパーとコラボることのないジャネットが、数ある女性ラッパーの中からカーディを選んだことが、意外だった。だが……残念なことに、楽曲自体はジャネットの優しい天使のような声を活かしきれていなかったように思う。カーディが大御所を立てることなく、圧倒してしまっている。反して、セレーナ・ゴメスやTylaといったポップ系のアーティストとは相性良く、力強くアグレッシブなカーディのラップとパッシブで柔らかい歌声が、まるでプラスマイナスの相乗効果を生んで、耳を潤す。

総評

内容の重複失礼する。彼女は「悪役」の役割を受け入れ、謙虚な姿勢を捨て、人生とキャリアを取り巻くドラマに立ち向かうことを決意したらしいと先述したが、アルバムタイトルのみならず、各曲のストーリーテリングにも多分に表れている。総括すると、「私ってすごいでしょ?で、私と敵対してるあんたら⚪︎⚪︎だわ!」という言葉を、あらゆる単語、ライミングを使用し、ちょっぴり大げさ(ドラマチック)で、攻撃的で、露骨に表現した歌詞こそが、彼女らしさと本アルバムの特色なのだ。

「大和撫子」的控えめで、穏やかで、可愛い女性像を理想する日本に対し、多様性や平等を重んじる文化で、自己主張や個性を肯定する価値観、そして男女平等を推進する社会運動の影響が生み出した、映画のヒロインのような、あるいはカーディのような、アメリカ独自の「セクシーで強い女性像」。彼女のアルバムは、そんな文化の違いも沸々と感じさせる。

なかなかの力作だが、なにせ長い!トラックはそれぞれ違った色を出してはいるものの、例えばジャネットを上手く活かし切れていなかったり、キャッチ―なコーラスも無くビートが凡庸な楽曲も有りきで、少々飽き(と疲れ)がきてしまうのも事実だ。だが筆者はこのアルバムを、特にヒップホップ好きの若者や女性リスナーにお勧めしたい。彼女の威勢良いラップが、頑張らなきゃいけない日や自信が欲しい時、きっと貴方をパンプアップさせ、背中を押してくれるだろう。

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