まずドレイクと何が起こった?
ヤング・サグとドレイク。おそらくこの二人を知らないヘッズはいないだろう、ヒップホップシーンの頂点に君臨する2人は、「Way 2 Sexy」や「Sacrifices」など、数々のヒット曲で世界を揺るがしてきた。その固い絆は、誰もが疑わない「最強の証明」だったはずだ。
しかし、2025年。流出した一本のテキストと、獄中からの痛烈なメッセージが、そのすべてをひっくり返した。これは、ヒップホップ界の権力、裏切り、そしてスターたちの生々しい本音を暴く物語である。
友情にヒビが入った瞬間
発端は、A$AP Mob周辺の有名スタイリスト、イアン・コナーが暴露したドレイクの極秘メッセージだった。
「Cobb Countyでスライム(ヤング・サグの愛称)に会った」
夜9時半から1時間に及んだとされる面会の事実は、添付されたボイスメモによって裏付けられた。だが、この密会が友情の証となることはなかった。むしろ、ヤング・サグの不満を爆発させる引き金となったのだ。
「お悔やみだけ送って、すぐに曲を要求してきた」ドレイクの薄っぺらいサポート
リークされた音声で、ヤング・サグは怒りを露わにした。
話題は、プロデューサーのメトロ・ブーミンの母親が亡くなった際のドレイクの振る舞いについて。サグは「あいつはお悔やみを送るだけで、何一つ本質的な助言をしなかった」と切り捨てた。さらに衝撃的なのは、その直後のドレイクの行動だ。「すぐに『曲をくれ』と要求してきた」と、その自己中心的な姿勢を痛烈に批判した。
この時問題になった楽曲こそ、後に大ヒットする「Trance」である。結局、ドレイクのバースはカットされ、メトロ・ブーミンとトラヴィス・スコットのバージョンとしてアルバム『HEROES & VILLAINS』に収録された。この一件が、サグの心に深い疑念を刻み込んだのは間違いない。
「名前を武器にしてるだけ」業界の王への痛烈な本音
ヤング・サグの批判は止まらない。
「あいつは“ドレイクであること”を武器にして、自分の利益しか考えていない」
この言葉は、単なる個人的な恨みではない。ドレイクの圧倒的な影響力のもとで、多くのアーティストが感じてきたであろう業界の力学そのものを突いている。彼の存在が、もはや純粋な音楽的リスペクトではなく、権力として利用されているという痛烈な告発だ。
フューチャーとの亀裂も露呈「ただやりたくなかっただけだろ」
今回のリークは、ドレイクだけでなく、盟友フューチャーとの関係崩壊も白日の下に晒した。
ヤング・サグは11分にも及ぶ通話で、フューチャーへの不満をぶちまけた。YSLの裁判でサグが苦しむ中、フューチャーは「Free Thug(サグを解放しろ)」と銘打ったサポートショーの開催を拒否。その理由を、サグは「あいつはただ、やりたくなかっただけだ」と一刀両断した。
「お前が知ってることは全部俺が教えた」師弟関係の暴露と二面性
サグの怒りは、フューチャーの人間性にまで及ぶ。
「俺に曲の作り方を聞いてくるくせに、女がいる前では俺を無視する」
彼はフューチャーの二面性を嘲笑い、業界でのイメージ作りの裏側を暴露。さらに、「お前が知ってることは全部俺が教えたんだ」と、これまで公にされてこなかった音楽界の師弟関係まで明かした。これは、プライドをズタズタにする最も強烈な一撃だっただろう。
「偽善者」「中身がない」止まらない人格攻撃
ヤング・サグの言葉は、もはや単なる批判ではなく、
「音楽以外は何も知らない偽善者」「噛み付くだけで中身がない」とフューチャーをこき下ろし、「父親として子どもと向き合わず、女に夢中だ」と私生活まで攻撃。長年の友情を完全に破壊するほどの激しい怒りが、そこにはあった。
ヒップホップ頂点の崩壊
ドレイク、フューチャー、そしてヤング・サグ。彼らは紛れもなく、現代ヒップホップシーンを築き上げたトップスターだ。しかし、今回の暴露によって、絆という幻想は完全に崩れ去ったように思う。
華やかな世界の裏側で渦巻く、冷酷な権力闘争と生々しい本音のぶつかり合い。我々が目撃しているのは、ヒップホップというカルチャーが持つ、あまりにも人間的な、そして残酷な一面なのかもしれない。