故2Pacが、1996年ロサンゼルスで開催された『Soul Train Awards』でMethod Man(メソッド・マン)に会った時、「俺がいつか共演したいのはWu-Tang(ウータン)なんだ」と直接本人に告げたという逸話はご存知だろうか?90年代半ば「東西抗争」と思われていたビーフは実はそうではなく、Bad BoyとDeath Rowという2大レコード会社の対立だとその時悟った、と昔メスがインタビューで語っていた。業界を牛耳っていたディディが90年代後半、色々と裏で暗躍していたことは有名だが、なんとWu-Tang Clan(ウータン・クラン)もその被害にあっていたという。
OGメンバーで今やレジェンドラッパーの一人、Ghostface Killah(ゴーストフェイス・キラー)は、The Bootleg Kev Podcastのインタビューで、ウータン・クランのセカンドスタジオ・アルバム『Wu-Tang Forever』リリース時、ディディがラジオでの放送を妨害したと語った。1997年にRage Against the Machine(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン)と共演したツアー(ツアー終了前に離脱したが)を回想しながら、「ツアーを離脱したんだが、決断を迫られてめちゃくちゃだったよ。こっちの仲間のところに戻るか、またはここに残ってこいつらとビッグになるか…んで、 結局離脱したんだ」ゴーストは続ける。「俺たちが離脱してHot 97に出演した時は… 最悪だった。あの日、奴らは俺たちのレコードをカットした。もうウーの曲はかけなくなった。パフィー(ディディ)が本気で怒っていた頃だった。分かるだろ?…もう以前のような感じじゃなかった…奴らを罵倒したさ」彼は、ディディがHot 97のブラックリスト入りに一部関与していたことを、最近になって知ったと語った。
「RZAが1年くらい前にこう言ってきたんだ、『おい、パフがあそこで俺たちのレコードを止めたって言ってたって認めたぞ』って。…だから全部バッドボーイのせいだったんだよ、ってね。『Triumph』をリリースしたけど、ラジオでは流れなかった。んで、奴が『ヨー、そうするしかなかったんだ』って真実を語ったことが判明した。…奴には力があった。いくら金を払っていたかは知らねぇが、とにかく力はあった。…いいか、俺たちは脅威だった。もし『Triumph』が予定通りにプロモーションされて、ラジオで流れ続けていたら、今の状況は少し違っていたと思う」
ウータン・クランとディディは、あからさまな確執はなかったものの、両者の間には敵意が渦巻いていた。それはRaekwon(レイクウォン)とゴーストの有名なスキット「Shark N****s (Biters)」で明らかになった。ゴーストは、ラッパーたちが「biting off your album cover and shit(アルバムカバーをかじったりしているぜ)」と辛辣なコメントをし、特にNas(ナズ)のアルバムカバーをコピーした無名の「happy go lucky n****s(のんきなN_____)」を批判している。当時、ほとんどの人はこれを、数ヶ月前にリリースされたナズのデビューアルバム『Illmatic』と同様に、赤ちゃんをフィーチャーしたデビューアルバムのカバーを飾ったNotrious B.I.G.(ノトーリアス・B.I.G.)への皮肉だと解釈した。ディディはまた、1999年のアルバムに『Forever』というタイトルを付けたが、これは前述のウータン・クランの1997年のプロジェクト『Wu-Tang Forever』と驚くほど似ていた。
そして、皆は覚えているだろうか?Ol’ Dirty Bastard(オール・ダーティ・バスタード)が1998年のグラミー賞授賞式のステージに乱入した時のことを。故ラッパーは、Shawn Colvin(ショーン・コルヴィン)の年間最優秀楽曲賞受賞スピーチを遮り、ディディが自分たちを抑えて最優秀ラップ・アルバム賞を受賞したことへの失望を表明した。「パフィーは良いけど、ウータン・クランは最高だ」と彼は言ったのだ。「みんなに知ってほしいのは、これがODBってこと。みんな大好きだぜ。ピース」
恐らくこんなことが出来ちゃうのは、今も昔もクレイジーでお茶目なODBぐらいだろう。ディディとウータン・クランの不和らしきものが表面的に確認されたのは、このODBのグラミースピーチ乱入事件くらいだったが、同じ東海岸のNY内で、あのウータン・クランさえもこのように不遇にあっていたのか、と今更ながら当時のディディの影響力に言葉を失う。
そんなレジェンドラッパー、ゴーストさん。先月のレイクウォンに続き、ニューシングル『Metaphysics』をリリースした。そして、待望のセカンドアルバム『Supreme Clientele2』は8月22日にMass Appealより、インパクトのあるキャンペーン「Legend Has It」の一環として発表される。全22曲を収録したこのプロジェクトには、ナズ、Conway the Machine、Styles P、M.O.P.、Dave Chappelle、そして同じくウータンのレジェンドであるレイクウォン、メソッドマンn、GZA、旧友Redman(レッドマン)など、錚々たる面々がコラボレーションしているらしい。楽しみだ!